A5 P72 700円 20091230発行
生徒会長×コンピ研部長 R18
表紙:
水戸幸村様中巻の続きとなります 縁談を知ってしまった部長のお話
全て諦めて身を引いてしまう部長を周囲は止められません
会長は部長を手に入れるために色々と画策していたようです
サンプル
幾日か経ち、久しぶりに現れた彼は、憔悴しきっているのを除けば常と全く変わらない様子だった。
「どうしたんだい?」
いつも精力的に活動している印象で、閨の内ですら疲弊したところなどあまり見た事がなかったから、あからさまに疲れ切った様子に戸惑いが走る。
「仕事が忙しくてな」
僕の膝を寄越せと言って、硬くて寝るには適していないだろうにずっと頭を乗せている。煙草を吸いたいのか手が箱を探っているけれど、指の動きがどうにも億劫だし起き上がる様子もない。
煙草に火でもつけてあげた方が良いのだろうか。
そんな風に考えながらも、腿の辺りにじんわりと感じる彼の体温に鼓動が早まる。近い位置だから、彼に聞こえてしまうんじゃないかと思うほど心臓が早鐘を打っていた。
「大変だったね」
何となく……そう、特に他意はなく、彼がいつも僕にするように頭を撫ぜてみる。彼は一瞬驚いたような表情を見せたけれど、特にうるさがるでもなく僕の思うようにさせてくれた。思いの他柔らかな髪の感触が気持ちいい。
すべてを許されている。そんな気分になりそうだ。
「お疲れ様」
「別に、疲れたってほどでもないがな」
労いの言葉をかければ、そんな風に嘯いてみせる。矜持の高さゆえか、それとも単に負けず嫌いの意地っ張りなのか、もしかしたら後者じゃないかなと思う事が最近増えてきた。
それは、僕の前では飾らない自分を見せてくれているということかもしれない。
そうだとしたら、たとえ家庭を持ったとしても、彼女の云う通り僕を必要としてくれる可能性があるのだろうか。
……いや、それはないな。
彼には、そういう相手が幾人もいるようだった。
それは僕の世話役を務めている女性だったり、一時身を寄せたことのある宿屋の主人だったり、数は少ないけれど僕なんかより余程信頼されている人間だ。その代わりを務めるようなことは出来ない。反対に、僕の代わりならきっと幾らでもいる。
せめて何か一つでもいいから、繋がっていられたらと切に願う。だけどそれが難しいことは、自分自身が一番良くわかっていた。
こんなに長く傍にいられたんだからもういいだろ。
理性が告げるもっともな言葉を、感情があっさりなかったことにしてしまう。
「疲れてるなら、今日は止めておいた方がいいかな」
茶化した言い方は、精一杯の誘い文句だ。
言ってしまってからかあっと顔が熱くなり、羞恥のあまり言わなきゃ良かったと身悶えそうになる。
彼が寝転がっていて正解だった。
顔を背ければ、きっと顔が赤いことは気付かれないはずだ。そして出来ればさっきの言葉は聞き流してくれているとありがたいんだけど……。
だけど、そううまくは行かないものだ。
「ん? ……したいのか?」
獲物を見つけた肉食獣のような声に射竦められる。
ぞくりと粟立ちそうになる二の腕を、彼の手が引っ掴んだ。
「うわっ」
ぱっと起き上がった彼に、ぐいっと引っ張られたと思うと、既に体勢は様変わりしていた。畳の上に投げ出されるような形で、彼が僕を押し倒している。
激しい消耗でやや痩せたようにも感じられるが、その目の輝きだけは衰えが感じられない。今にも捕らえた獲物を食い破りそうな獰猛さに、怯えるより先に胸が打ち震えてしまった。
……やっぱり、好きだ。
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