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わくらば2

神夜飛鳥さんから奪い取ったリクエスト 会部 続き




 コンピ研部室に戻ると、やきもきした顔の部員が全員揃って待ってて、落ち込んだ気持ちが更に沈んだ。うう、報告するのいやだなぁ。まぁそうも言ってられないので、とりあえず席につく。
「みんな、ごめん……力及ばなかったよ」
 どんより肩を落とすと、ああやっぱり……という悲壮感が室内に漂った。だけどすぐに明るく取り繕って、
「仕方ないですよ。春休みバイトしましょう」
「そうそう、大丈夫ですって」
「なんか今期の生徒会っておかしいって話でしたから。噂ですけど……」
「部長! 頑張りましょう」
「みんな……」
 誰も僕を責めず、反対に慰められてしまって、その気持ちをありがたく思いつつ情けなくて溜息が出た。僕がもっとしっかりしていればなんとかできたかもしれないのに……そう思うと、なんだかやりきれない。
「とりあえず、うん、そうだね。今日は時間も時間だし帰ろうか。また来週にでも色々話し合おう」
 そう促して席を立った。
 部員が挨拶をして帰ってから、念のため全てのPCがシャットダウンされてるか確認して施錠する。
 外はだいぶ暗くなってきてる。だんだん春めいてきたとはいえ、まだまだ日が落ちるのは早いね。
 階段を下りて本校舎に向かう途中で、職員室の隣にまだ灯がともっているのを見かけた。まだ生徒会室には人が残ってるみたいだ。
 もう一度、交渉にいってみようかな。さっきのは自分の態度がいただけなかった。それこそ土下座でも何でも僕に出来ること全部して、少しでもいいから予算が取れないかたずねてみるのもありなんじゃないか?
 ぼんやり生徒会室を眺めながら、思い浮かんだ考えをあーでもないこーでもないとこねくりまわしつつ下駄箱に向かう。
 ……行ってみるかなあ。駄目でもともとだし。
「よしっ」
 そうと決まれば善は急げだ! 幸いまだ誰かいるようだったし、話くらいはできるだろ。
 暗い、誰もいない廊下を通って生徒会室へ向かう。灯りがもれているのを見て取って、ノックしてから戸をあけた。
「あのっ、コンピ研です……け、ど……」
 語尾が尻すぼみになったのは、別に気圧されたとかそういうわけじゃない。見えてるものが信じられなくて、次に続ける言葉が頭からすっぽぬけたせいだ。
 そこにいたのは、さきほど顔を覚えたばかりの生徒会長だけだった。表情にほんの少しばかりの驚きが出てる。長机に書類を並べ、どうやらそれに目を通していたらしい。それだけなら生徒会業務お疲れ様です、と言ってやってもよかったが、
「何やってるんだキミは!」
 思わず声を上げると、指先に挟まれたソレをくゆらしながら、唇の端だけ上げるやり方でにやっと笑って見せる。こんなときなのにこれがドラマとか映画ならさぞかし絵になるんだろうなと思う自分は、どうかしてると思う。
「何とは?」
「たっ、煙草なんて校内で吸っていいとでも思ってるのかい?」
 いや、校内じゃなくてもだめだけど。なんていうのか、仮にも生徒会長とかがやっていいことじゃないだろ。
 会長は慣れた手つきで携帯灰皿らしきものに灰を落とすと、すっくと立ち上がった。反射的にじりっと後ずさったところに声をかけられた。
「何か用があったんじゃないのか?」
「え……あ……」
「用があるならそんなところにいつまでも立っていないで入りたまえ。少しなら時間を割こう」
 用、用ならある。予算の件だ。
 ここに来た当初の目的を思い出しはしたものの、どう話をすすめていいものか……僕は、予想外の出来事には弱いんだよっ。
 とりあえず部屋にはいると「そこにかけたまえ」と促されたので椅子に腰掛けた。その時、僕に天啓が訪れた。
 煙草を吸ってる生徒会長なんていくらなんでも聞こえが悪い。体裁とか、外聞とか、気になんないのかな。そこまで考えたところで、はたと気付いたのだ。これって、もしかしたらチャンスなんじゃないか? 
 だって、これは弱みだろう? ごくりと喉がなる。
 涼宮さんみたいには無理だけど、相手よりも優位に立って物事をすすめるのは交渉の鉄則だろ。いわば必勝のカードを手に入れたって事じゃないか!
「用件を聞こうか、コンピ研」
 眼鏡が蛍光灯に反射してきらっと光った。立ったまま煙草をくわえ、ときたま煙を吐きながら、こちらを見ている。
 その視線の強さに怯みそうになりつつ、精一杯の虚勢をかき集めて胸をはった。
「やっぱりあの予算には納得がいかないね」
「ふむ、それで?」
「……予算について検討してもらえるなら、キミのその行為を黙っててあげてもいいよ」
 涼宮さんを真似て腕を組み椅子にもたれ、なるべく偉そうな態度を作ってみる。おお、なかなかいい気分だ。
 少しはあせるかと思いきや、会長は余裕綽々で笑ってる。何がおかしいんだ。
「黙っててもいい、ねえ」
 なぜかその声を聞いたとたん、背筋がぞくっとした。
 空気が、違う。
 彼は煙草を消すと、こちらをふりかえった。その顔は、どこか人を食ったような感じで、なんていうかさっきまでと全然印象が違う。冷静沈着を地でいくみたいなのじゃない。もっとこう、なんていうか、わかりやすく悪者な感じだ。
「別にいいぜ。言いふらしたきゃ勝手にしろよ」
 喉の奥でくくっと笑って、
「世間様は、俺とお前と、どっちの言うことを信じるだろうなあ?」
 そう言った顔から、なぜだか目が離せない。彼はゆっくり歩み寄ってくる。蛇ににらまれた蛙みたいに動けなくなった。
「うわっ!」
 前髪を掴まれて、そのまま顔を上げさせられた。痛くはないけど反射的に殴られるっと思って目を閉じる。
 ……予想していた痛みは訪れなかった。
 けれど、ある意味もっと衝撃的な出来事が僕を襲っている、気がする。これって、もしかして、あれ、なんで?
「ん、抵抗しないのか?」
 耳元で、くすくす笑う声が聞こえる。目を開くと、すごく楽しそうに笑う彼の顔がめちゃくちゃ近くにあって驚いた。後ろに下がろうとして失敗して椅子ごと転げそうになったところを、ひょい、と体だけ掬い上げられる。椅子がガターンと音を立てて倒れた。
「あっぶねえなあ」
「あ、あ、あ、」
「何だよ」
「なにするんだよ!」
 うわ、声ひっくり返った。
 でもまあ意図は通じただろう。
「何って、き……」
「うわあああああああああああああ」
 言うな言うな言うな! ああっ、なんでこんなことになってるんだ、ありえないだろ!?
 いつの間にか会長はさきほど座っていた場所へ戻り、新しい煙草に火をつけていた。
「さっきも言ったが」
 煙草をくゆらしながら、
「言いたきゃ言えよ。その代わり、男にキスされて抵抗もしないって噂ばらまいてやるよ。俺はどうだっていいんだぜ。どうせそんくらい奴が揉み消すしな」
「ど、どういう意味だ」
「お前が知る必要はねえよ。ああ、でも一つ教えといてやろうか」
 ふっと目を細めるかっこつけた顔が、やけにサマになっている。
「俺に逆らうのは得策じゃねえ。覚えとけ」

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