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A5 P64 500円  20071007発行合同誌
古泉一樹中心 古泉×キョン(全年齢)
タカイチさん主催の合同誌です
カンノさん、長谷川楓さんとご一緒しました
ゲストにくまこ様をおよびしています
わたしは未来パラレルで、友情と恋愛との微妙な狭間っぽい短いお話をひとつ
他の執筆者様の友情以上恋愛未満なかわいいお話は必見です
古キョンというより古キョン古といったほうが近いかもしれません




サンプル

 春の柔らかい日差しから段々と夏の暑さを感じさせはじめる五月も半ば、久しぶりに古泉がオセロゲームを取り出した。
 俺は白を黒に塗り替えていく作業を淡々とこなす。
 相変わらず古泉は弱い。弱すぎる。弱いにもほどがある。さっきから連戦連勝だ。
 普通は理数系ならこういったゲームは得意なものなんじゃないのか?
 そういえば、と目の前の如才の無い笑みを浮かべた無駄に整った顔をしている超能力少年の姿を見やる。
「もう二年か」
 つぶやいた言葉に、リバーシブルの石をつまんで盤面を見つめていた古泉の視線がこちらに向いた。こっちを見るな、気色悪い。
「なんでもない」
 そう言ってやると、柔和な目に不審げな色を浮かべながらも
「そうですか」
 と盤面に視線を戻した。
 白と黒が交互に陣地を取り合っていく。
 もう二年、それともまだ二年というべきか。なんにせよ密度の濃い時間を過ごしてきたことに間違いはない。
 だがその反面、人間関係としてはあまりに希薄な気がしてきた。そう、俺はいまだにこいつの部屋に足を踏み入れたことさえないのだ。俺のプロフィールは全て知られているというのに、これはいくらなんでも不公平というものではないだろうか。
 俺の知っている古泉の個人情報なんざないに等しい。せいぜい名前、クラス、それに『機関』とかいう謎の組織に属していて、SOS団の一員、そして超能力者、アナログゲームが好きな、ハルヒのイエスマン。両手に満たない程度の知識だ。それだけ知っていれば充分事足りるとも思うが、なんだかんだいって高校生活を送る上でずっとつるんできた相棒としてはどうなんだろうね。
 つらつらそんなことを考えながら、徐々に黒の占める割合の多くなる盤面を眺めているうちに、ふといつか古泉が呟いた台詞を思い出した。
『いつかそのうち、完全に対等な友人となったあなたと昔話を笑い話として語る日が来て欲しいものです。任務や役割など関係のない、ただの一人間としてね』
 遠い目をしながらそんなことをほざいていたが、こいつにとってはあの時点で俺との間には不完全で不等な関係でしかなかったということなんだよな。それはおそらく今も。その証拠にいまだにこいつは敬語を崩そうとしない。
 なんとなく面白くない。
「お見事です」
 勝敗が決した。盤面は黒石がそのほとんどを占めている。
 悔しがるでもなくにこやかに石を集めるいつも通りの古泉を見ていて、なんとなく思いつきを口にしてみた。
「土曜、おまえんち行くからな」
「はい?」
 古泉の目が驚きに見開かれる。
「ついでに泊まる」
 そう続けると、訝しげに眉をひそめる。
 ふむ、お前はもう少しそういった表情もするべきだな。いつも笑ってばかりだと能面かと思うぞ。
「……いったいどうした風の吹き回しですか」
「別に」
 理由なんてありゃしないさ。ただの気紛れだ。
「つまらないと思いますよ」
「それはお前の主観だろ」
 嫌なら嫌だと言えばいい。回りくどい言い方は好かん。
「わかりました。今週末ですね。お待ちしております」
 答えた古泉の笑顔にはいつもの無駄な爽やかさが足りなかったが、あえてそれには気がつかない振りをして俺も石を拾い集めた。

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