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わくらば1

神夜飛鳥さんから奪い取ったリクエスト 会部 プロローグ




「なんなんだこれはっ」
 プリントを持つ僕の手がわなわなと震える。
 各部活動の来期予算が記載されたそれの、コンピュータ研の欄には、信じ難い数字が踊っていた。前年度の3割減。とてもじゃないけれど納得できない数字だ。
「いったいどうなってるのかな、これは?」
 会計担当のコンピ研部員を見やると、情けない表情で、
「すいません……」
 と言うばかりだった。がっくりうなだれた様子を見ていると、まるでこちらがいじめているような気分になってくる。
「別に謝ってほしいとは誰も言ってないよ。状況を説明してくれるだろ? 僕が私用で予算分配会議に出られなかった分、キミに迷惑をかけたのはわかってるつもりだ」
 語気を弱めて改めて問うと、おずおずと彼は話し始めた。
「実はそれ、今期の生徒会長が作成した予算案そのままなんです。俺もそれ見てあんまりだって思ったから抗議しようと思ったんだけど、他のクラブの奴らなんにも言わないし、言える雰囲気じゃなかったんです。本当にすいません」
 うなだれてぽつりぽつりと話す彼の様子に、糾弾する気は失せた。まあ元々そんなつもりもないけど。
「ちょっと交渉してくる。キミ達は先に帰っていいから、施錠だけお願いするよ」
「頑張ってください、部長」
「予算は必ずや勝ち取ってくるよっ」
 そう言い置いて、部室を後にした。
 廊下を足早に歩きながら、手にしたプリントにもう一度ざっと目を通す。
「んん?」
 なんとなく数字に違和感がある。
「あれ。これって……」
 なぜか文芸部の予算が明らかにおかしい。長門さんしか正式な部員はいないのに、やたら潤沢な金額が記されてる。
 いったいどういうことなんだ? 首をひねっているうちに職員室を通り過ぎ、生徒会室に辿り着いた。
 そのまま扉を開けようとして、はたと気が付いた。そういえば今の生徒会長ってどんな奴だった? 選挙じゃ信任投票だったから、とりあえず丸つけた記憶があるんだけど……顔も名前も覚えてない。何せ同じ学年とはいえうちは生徒数が多いから、よっぽどのことがないと覚えられないんだよ。
「……キミ、生徒会室に何か用か」
「うわっ」
 いきなり声をかけられて、おもわずびくっとする。
 慌てて振り返ると、細長い銀縁眼鏡をかけた長身の男子生徒が腕組みしながら立っていた。
「用があるならば私が用件を聞こう」
 偉そうだ。三年なんだろうけど。なんていうか尊大な態度だ。
 でも、低いけれど聞き取りやすい、女子が好きそうな声質だなぁ。オールバックとか普通ないだろ、と思うけど、似合うなあ。俳優とかにいそうなかっこよさだ。かっこいい男は敵だ。心の中で敵と認定しておくことにする。
「ええと、生徒会の人ですか? 僕はコンピュータ研の部長なんですけど、予算の件でお話があります。生徒会長はいますか」
 冷たそうな表情に気後れしながらも、愛想笑いを作り用件を伝える。小心者と言うなかれ。この年頃の一学年差は大きいんだ。
「ふむ。そうか」
 じっくり上から下までねめつけられて、少し怯む。居心地が悪い。回れ右をして逃げたい気分だ。
「生徒会長ならいる。入りたまえ」
 そう言って扉を開け、振り向いていた肩を押された。
「わわっ」
 いきなりの動作にたたらを踏む。
「あ、危ないじゃないかっ」
「別に転ばなかったろう」
「そういう問題じゃない!」
 彼は唇の端を嫌味な感じに吊り上げて、フッと笑った。なんて嫌な奴だ。
 それに、
「誰もいないじゃないか。会長はどこにいるんだよ」
 単なる会議室のように長机が配置された室内は無人で、電気もついてない。どういうことだ、これは。断固抗議するぞ!
「ここにいるだろう」
「え?」
「生徒会長は私だ」
「ええええええええええええ!?」
 ああっやばい、つい叫んでしまった。だって、まさか同学年とは……こんな目立つ奴いたら少しくらい覚えてるもんじゃないのか。それよりなにより、なんでそんなに偉そうなんだ2年の癖に!
 彼……生徒会長は、喉の奥でくくっと笑って、
「そこまで驚くか、普通?」
「う、うるさいなっ。そんなことよりもっ」
 本題だ、本題! 
 プリントを会長に付きつけて、
「この予算はいったいどういうことだ!」
「何がだ」
「とぼけないでくれ! どうみたっておかしいだろう? なんでウチがこんな予算なんだ」
「ふむ。どこかおかしいかね」
 ずれてもいない眼鏡をかけなおす仕草が勘に触る。ああもう、本当にこいつ嫌いだっ。
「おかしいも何も、コンピ研の予算が少なすぎるだろう、いつもの7割だぞ7割。何の嫌がらせなんだ」
「ふむ」
 思案げな表情を作った会長が、長机の上の分厚いファイルを手に取った。
「コンピ研だったな。生徒会の調べによると、前年度最新のデスクトップパソコンを購入しているな?」
「そうだけど…」
 SOS団に脅迫されて獲られた。
「現在の部員数よりパソコンの数のほうが多いはずだ。故に維持費だけで充分だろうという結論が出ている。それとも新規に導入しなければいけない何かがあるのかね?」
 SOS団にゲームの景品としてノートパソコンを巻き上げられたせいで、手元にはない。
 だが、
「……ない」
 こう答えるしかないじゃないか。だって校内で賭け事をしてたなんてばれたらやばいだろ。
「でも、それをいうなら文芸部に予算が回されるのはおかしくないかい? 長門さん一人しかいないし、ろくに活動なんてしてないよ」
 ごめんよ長門さん……キミには恨みはない、むしろいつもいつもいつもいつも感謝してるけど、予算がないのはこまるんだ!
「文芸部は、前年度会誌を発行している。小説誌としてなかなか読み応えのある冊子だった。キミも確か寄稿していた中の一人ではなかったか? ほとんどが外注によるものとはいえ、あの会誌を評価しないわけにはいかない。なにしろ全校生徒の注目の的で、一日で二百部がなくなったそうだからな。活動記録としては今期予算に充分値すると生徒会は判断している」
 冷静沈着という言葉がよく似合う口調で返されて、思わず気持ちが怯んだのを見て取ったのだろう。ダメ押しのように彼は続けた。
「キミ達コンピュータ研はゲームソフトを作って文化祭で発表したということだが、まったく話を聞かない。ようは」
 芝居がかった動作で、ファイルに落としていた視線をあげ、まっすぐ射すくめられた。
「その差だよ。わかるかね? コンピ研」




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