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灼熱

古キョン

絵茶で触発されたもの
とろとろ何も考えずテキスト打ったので後で改稿します
ってか削除するかもですが




 うだるような暑さの中、いつもの休日と変わらず俺達は駆り出されている。夏休みだというのに、他にすることがないのかね、あいつは。
 今日は古泉とペアだ。余計に暑苦しい。暑苦しいったらない。近いしうざいし夏まっさかりのこの時期に一緒にいたい相手ではないな。
「あちー…」
 歩くたびに汗が吹き出て、髪も服も肌に張り付いて気持ち悪い。襟元をつまんで少しでも風を入れようとしたが、所詮無駄な悪あがきというやつだ。
「本当に暑いですね」 
「嘘をつけ」
 反射的に言い返すと、ひどいですね本当ですよと古泉が応じる。汗ひとつかかずにいつものハンサムなにやけ面を維持して何を言うか。おまけに声まで涼やかだ。本当に真夏が似合わない男だよおまえは。
「…っ」
「どうしました?」
「汗が目に入った…」
 地味に痛い、やばい。手でこすったら更にじんじんと痛みが増した。くそっついてない。
「大丈夫ですか?…すみません、ゆっくりでいいのでこちらへ」
 ひやり、とした感触が、俺の左手に触れた。ぎゅっと握りこまれて、古泉の手だと気がついた。先の言葉の通りゆっくりと手を引かれて、誘導されるがまま目を瞑って歩いた。
 少し日が翳った感じがする。木陰だろうか。周りに人の気配は感じない。
「こちらで少々お待ちを」 
 そう言い置いて、古泉が離れていく。離された手にほんの少し寂しさを覚えたのは、暑さのせいで頭がおかしくなってるせいだろう。ああ、そうに違いない。他に何か理由があってたまるか。…それが詭弁にすぎないことは自分が一番よくわかっているがな。
 そろそろ認めておこう。俺はやつが好きだ。主に顔。それと声。たまに真剣になった時の眼差し。男とは思えないほど整った指先。触るとやわらかそうに見える髪。作っていない時の笑顔。視線をそらしてもいつの間にか見てしまう。どうしていいかわからなくなるからできれば近づきたくない。でも近づいてくるのを拒めるわけもない。なんせ俺はあいつの顔に弱いんだから、当然だろ?自明の理だ。
「遅くなりました」
 いや、お前がいなくなってから3分も経っちゃいないだろ。だが、どうしたんだいきなり消えて?
 そうおもったとき、冷たく濡れたものが瞼に押し当てられた。
「うあ…っ!」
「ああ、すみません。驚きましたか?そこの水のみ場でタオルを濡らしてきました。これで少しは楽になりませんか?」
 水気をたっぷり含んだタオルでしばらく目元を冷やしていると、だいぶちりちりとした痛みが引いてくるのがわかった。機転が利くやつだな。
「ありがとな」
 ぽそっとつぶやくと、たいしたことではありませんと返された。そう優しくするな、暑さのせいでただでさえおかしくなってるところに勘違いを起こしたらどうする。いや、おまえはどうもしやしないだろうがな。
「もう平気だ」
 やんわりタオル越しに手を押し返す。
 心配げな古泉の顔は、なんだかやたらと綺麗で思わず見とれかけた。そういう顔もするのかという驚きと、させたのが俺だという事実が綯い交ぜとなって、急に恥ずかしくなって顔を伏せた。
「本当に平気ですか」
「平気だって言ってるだろう」
「顔が赤いですよ。熱中症を起こしてるんじゃないですか」
 古泉の手が額にのびてきて、思わず飛びのいた。
「お前は俺の保護者か!過保護すぎる。だいたい熱中症なんてそう簡単になるもんじゃない!」
 俺の言葉に、古泉は大げさに嘆息した。いちいちしぐさが大げさな奴だ。
「それだけ元気があるなら大丈夫でしょうが…心配なんですよ。あなたのことが」
「なんでだよ。ああ、俺がハルヒの『鍵』だからか? 別に俺が多少具合が悪かろうが閉鎖空間を発生させるほどでもないだろ。気にしすぎなんだよお前は」
 珍しいことにむっとした表情になった古泉が、俺の左手首をつかんだ。そのままぐっと引き寄せられて、半ば古泉に抱きこまれるような体勢になる。何するんだ、冗談はやめろ、離せ、おまけに顔が近い。
「たしかに僕はあなたのことを気にしすぎているかもしれません。しかし、あなたが思い当たる理由は、本当に涼宮さんのことだけですか?そうだとしたら、鈍いにもほどがありますよ」
 ちょっと待て、本気で顔が近い。 
「そこまであからさまに気がつかないふりをするほど、この気持ちは迷惑ですか」 
 だからちょっと待てと言ってる。お前の言うことは俺にはさっぱり理解できない。それはアレか、理系人間の性か。自分に理解できる言葉が他人にも確実に理解できるとは限らないということはわかっているか?
「言葉で無理なら、行動で示すまでです」
 だから近いって…!
 言い募ろうとした言葉が、唇から発せられる前に古泉のそれで塞がれる。軽く触れるだけではなれたそれが口付けだと気がついて、ぞくり、と肌が粟立った。
「かなわないのは承知の上です。だまし討ちのようなことをしたのは謝ります。でも…」
 続けて自嘲気味に紡がれた言葉は、俺の予想をはるかにこえて、充分な衝撃を与えるものだった。
 …悪い、古泉。俺は暑さのせいでとうとういかれてしまったようだ。本当に熱中症か何かかもしれないな、うん。というわけで俺は帰る。ハルヒ達には適当に言っておいてくれ。
 そう言いおいて踵を返そうと思った。が、思うだけで終わった。古泉の腕を振り解くことができない。
 顔が、熱い。
 いくらなんでもないだろう、古泉が俺を…好きだなんて言ったりするのは有り得ないだろう、しっかりしろ俺。からかわれてるだけだ、動揺するな。
「…すみません。困らせたいわけではないのです。どうぞ忘れてください」
 忘れろと言うなら忘れてやるさ。それにしても性質の悪い冗談だ。どうせならもう少し笑える冗談にしとくんだな。男とキスとか、本当に笑えないだろ。
 そう呟いた途端、視界が揺れた。あ、やばい。泣きそうだ。気づかれないように、顔を伏せる。
「…冗談にされてしまうのですね」
 いつになく硬い声に内心ぎょっとする。俺を掴む腕に力がこもったのを感じた。その掌の熱さに眩暈がする。
「あなたって人は…僕をどこまで追い詰めたら気が済むのですか」
「追い詰めたらって、なんだ」
 そんなことした覚えはないしするつもりもない。むしろどうみてもお前が俺を追い詰めてる状況だろう。断固抗議するぞ俺は。忘れてほしいようなことは最初からするな、俺は物覚えは悪いほうだがインパクトが強いことはなかなか忘れないものなんだ人間ってやつは。人をからかうためだけに好きだの何だの軽々しく口にするな。キスとかするな。
「期待、させるな…」
 ぽろっと言ってしまってから、その台詞の意味するところに気がついて血の気が引いた。これ以上はやばい。俺が10人は軽くはいる墓穴を掘る自信がある。
 手を振り解こうとしたら、逆に更に強く掴まれた。
「期待とは?」
「離せ」
「答えていただけるまで離せません」
「ふざけるな」
「ふざけていません」
「離せって言ってるだろ!」 
「あなたが好きなんです」
 さっきと同じ言葉が耳朶を打つ。立ち竦んだところを抱きしめられた。引き剥がそうとしてもうまく行かない。細く見えるくせになんて馬鹿力だ。
「…離せ」
「離しません」
 耳元で囁くのは反則だろう。もう、どうにでもなれという気分になってきた。暑さで脳細胞が死滅したのかもしれない。
「立場をわきまえるべきなのは理解していますが、諦めきれなくなりました。僕にも少しは芽があるようですから」
「忘れてほしいんじゃなかったのか」
「撤回します。あなたの返事をいただけますか」
 いつもの飄々とした様子とは別人のような、訥々と言葉を選びながら話す声は、本当に古泉の物なのか。
 暑さでお互い頭が沸いてるだけだ。それくらいわかってる。だが、俺も諦めきれない気がしてきたのはなぜなんだろうね。
 顔を上げると、驚くくらい近い位置に古泉の安っぽいアイドル顔があった。だから顔が近いって言ってるだろう。この場合は都合がよかったが。
 目を閉じて、数センチの距離を詰める。ああ、どうせなら慌てる顔を見るために目はあけたままでもよかったか、と沸いた頭でぼんやり考えた。



 うだるような暑さの中、いつもの休日と変わらず俺達は駆り出されている。
「あちー…」
 もう夕方に近い時間だというのに、アスファルトの照り返しのせいか気温がなかなか下がらない。
 汗だくになりながら外で過ごすより、喫茶店か何かに入るべきだったんじゃないのか俺達は。
「本当に暑いですね」
「そう思うなら離れろ。近いうざい暑い」
「嫌です」
 相も変わらず汗ひとつかかずにいつものハンサムなにやけ面…いや、いつもよりにやけている古泉が、やけに嬉しそうに答える。
「ああそうかい、好きにしろ」
「はい、そうします。あなたと手をつないでもよろしいですか?」
「は…?」
 返事を返す前に手を取られた。瞬時に手を引こうとしたが、なんだか幸せそうに間抜け面を晒している古泉を見たらその気が失せた。好きにしろと言ったのは俺のほうだしな、自分の発言には責任を持つべきだろ。
 空を見上げると、うっすら紗がかかって色をかえはじめていた。日が完全に落ちれば少しは涼しくなると信じよう。
 涼しくなってもこの奇跡が続いていることを願いつつ、絡めた指先をぎゅっと握り返した

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