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disappear 4

会部 パラレル 「おい、」
 耳元で低い声が吹き込まれて、さらりと髪を梳かれた。次いで軽く揺り起こされて、意識が覚醒に向かう。
「ん……」
「起きろ、バカ」
 乱暴な口調をなぜだかとても懐かしいと感じた。うっすらと目を開けると、まだ辺りは暗い。
 何か、夢を見ていたような気がするのに、起きた途端さらさら流れる砂のようにそれは僕からすり抜けてしまった。
 ただ、ひどく悲しい気分だけが重苦しく身の内に残る。
「……どうしたんだい?」
「それはこっちのセリフだ」
 ずきりと痛んだのは、頭か胸か。
「何泣いてんだよ」
「え……?」
 指摘を受けて自分の顔を触って驚いた。
「あれ?」
「ったく……」
 慌てて目元を拭ったけれど、すぐに視界がじわじわと歪む。別に泣くようなことなんて何もないのに、どうして僕は涙が止まらないんだろう。
「ごめん、なんでだろう……」
「しょうがない奴だな」
 呆れたような言葉を紡ぐくせに、くしゃりと僕の髪を掻き混ぜる手の動きは優しい。それに気付いたら、余計泣けてきた。
 情動に突き動かされるまま、僕のほうからおずおずと背中に手を回してみる。ぴくりと彼の身体が強張ったけれど、すぐに抱き締め返された。からかうような声色が耳朶をくすぐる。
「珍しいな、どうした?」
「……そういう気分なだけだ」
「フン」
 彼は飽きもせず僕の髪を梳く。触り心地なんて大してよくないと思うんだけど、彼はそうするのが癖のように僕の髪を触るのだ。
 顔を上げると、すぐ近くにある彼の視線とぶつかった。そのままどちらからともなく口付けて、舌を絡める。舌先に、馴染んだ苦味と香りを感じた。
「……よかった、キミだ」
 ぽつりと漏れた言葉に、「何言ってんだ」とキミが笑う。そんな当たり前のことを、当たり前だと思えることが、どうしてかわからないけどすごく嬉しかった。
「なんでもない。……好きだよ」



 告げた言葉に対する返事は、キミの僕だけにもらえる言葉であればいいと思う。

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