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crime 2

全然お祝いになってない快気祝い
会部




 手に入らないと知っていたから、手を伸ばした。
 振り払われるとわかってたから、安心していた。

 それなのに。

「いいよ」
 全てを諦めたような目で俺を見て、全てを許すような声でぽつりと呟く。
 そんな状況が訪れるとは想定していなかったから、むしろ俺のほうが慌てた。
「いいって、お前……」
「いいんだ」
 俺がわざわざ逃げられるだけの隙を作っておいてやったのに、そいつはわざわざ鳥籠の中に入るような真似をしてみせる。それがどれだけ俺を煽るか、きっと気付いてないんだろう。
「僕がキミの助けになれるなら、いいよ」
 くそっ。
 心の中で悪態をつきながら唇を合わせれば、腕の中の身体が微かに震えた。それでも、逃げていかない。拒まれない。
 受け入れられてるわけじゃない。そうわかっていたのに、自分自身を止めることが出来なかった。
 きっかけは些細なことだった。ちょうど女に三行半を突き付けられてイライラしていたところにこいつが話しかけてきて、慰めるようなことをいうものだから、じゃあお前が女の代わりしろよとか、そんな軽口を叩いた覚えがある。だけどそんなのいつものことだ。何言ってるんだバカ、と言われておしまいのはずだった。欲しいものなんて手に入らないくらいが俺にはちょうどいい。
 ちょうどいい、はずなんだ。
 それなのに。
 口付けて、肌に触れて、身体を暴いて、征服して。
「ん……っくぅ、っは……」
 いったい俺は何をしてるんだろうな。
 代わり……誰が、何の?
 反吐が出そうだ。自分にも、俺を拒まないこいつにも。
 俺にはこいつを奪うことしか出来ない。その事実に、歪んだ笑みが浮かんだ。





 眠っているところを起こさないようにそっとベッドから抜け出す。微かに身じろぎしたそいつの寝顔のあどけなさに誘われるように手を伸ばしかけて、触れる直前でなんとか引き戻した。
 俺には、こいつに触れる資格なんてない。
 ぎり、と奥歯を噛み締めて、その場を離れた。
 手早く衣服を身につけていく。そろそろ時刻が迫っているからだ。つい長居をしてしまった、急がないとならない。
 急いでいる理由はそれだけじゃない。このままここにいたら、こいつを追い詰めることしか出来ないせいだ。何も与えるものがないくせに、全てを奪いにかかろうとする、そんな存在は害悪でしかない。
 きっちりネクタイを締めて、サイドテーブルに置かれていた眼鏡を手に取り、軽くレンズを拭ってから定位置にかける。夜遅くに出歩いていたとしても、予備校の帰りか何かだろうと誰もが勘違いしてくれそうな完璧さで、『生徒会長』の出来上がりだ。
 ……これでいい。
 もう一度眠っているそいつの横顔をちらりと盗み見て、俺はベッドに背を向けた。狭いワンルームを抜け出ると、ひやりと夜の風が頬を撫ぜる。

 ぱたん。
 
 ドアの閉まる音は軽い響きだったが、俺にはひどく重く感じられた。

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