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手当て

会部なんだか部会なんだか…たぶん会部で甘くて砂糖吐きそう



「夏風邪はなんとかが引くっていうよね」
「……何が言いたい」
「いや、別に何も?」
 殊更にっこり笑ってやれば、とても嫌そうな顔で眉を顰めた。いつもと逆の立場ににやにや笑ってしまう自分が止められない。
 気が遠くなるほど暑い日が続いたかと思えば、一転して昨日から肌寒いほどの気候となっている。寒暖の激しさに伴って体調を崩す人が続出しているらしい。そして彼もその一人だった。
 だけど話を聞いたら、どうやらエアコンをつけっぱなしで寝ていたみたいだ。別に気温の差がなかったとしても遅かれ早かれこういう事態を引き起こしたような気がしてならない。
 ぐったりとベッドに突っ伏している姿は、とてもじゃないけど学校にいる時の『生徒会長』と同一人物には見えなかった。元々僕の部屋でダラダラしている時は気が抜けてるんだけど、更にそれが顕著というか……大変そうなところ悪いかなあとは思うけど、ちょっとだけ面白い。
「ごはん食べれる?」
「薬寄越せ」
 何も食べずに薬だけ飲んだりしたら間違いなく胃が荒れることぐらいわかっているくせに、そんなことをいう。僕が風邪を引いた時はあれだけ飯を食えと騒いだくせに、自分のことになるとそういう態度なのは非常にいただけない。
「なんでもいいから食べてくれ」
 おかゆでも、ゼリー飲料でも、果物でも構わない。風邪の時でも食べやすそうなものはあらかたそろえたのだから、何かひとつくらいは食べれるものがあるはずだ。
「子供じゃないんだからさあ」
 まったくもう、と溜息をついた僕を彼がギロリと睨み付けた。熱のせいで潤んだ目じゃ全然迫力がない。鏡でも持って来て見せてやりたいね。そんなんじゃ同情しか誘わないよ。
 意地悪く彼が笑みの形に唇を歪める。
「口移しだったら食ってやってもいいぞ?」
 そんな風に嘯いて、しゃべっているのも億劫なのか、荒い息をついて目を閉じる。
 こんな状態だというのに僕をからかって虚勢を張ろうとする矜持の高さには感服するしかない。
 しょうがないなあ。
 手元にあったゼリー飲料を手にとって一口だけ口に含み、ええいままよと口付けた。いつもされるように唇を割り開いて、舌を滑り込ませると微かに体が強張る。舌先を伝って流れ込んでいくそれを、ごくんと飲み下す音が聞こえた。
 抵抗はないけれど、驚いているのが如実にわかる反応がちょっと楽しい。なるほど、少しだけキミが僕をからかってくる時の気持ちがわかるような気がするよ。
 唇を離した時に小さく水音がしたのが、少しだけ気恥ずかしい。
「何をしてるんだっ」
「キミが口移しだったら食べるって言ったんじゃないか」
 そう反駁してもう一口分含んで顔を近付ける。
 ──そういえば僕のほうからキスすることってあんまりないな。
 そんなことを考えながら何度かそうやって繰り返しているうちに、ちょっとしたイタズラ心に背中を押されて、普段されてるみたいに深く口付けたら盛大に拒まれた。ぐぐっと顎を抑えて押し退けられる。
 押し退けられる力が思いのほか弱くて、やっぱり辛いんだなあと実感した。
「自分で食べられる?」
「……ああ」
 ものすごく不本意そうで不機嫌かつ苦々しげな表情に、思わず吹き出しかける。でも笑ったりして、やっぱり食べないとか言われたら困るので何とか堪えた。
「それならいいよ。どれがいい?」
「それでいい」
 肘をついて軽く身体を起こした彼に、手にしていたパックを奪い取られる。ちぅ、と口をつけたのを確認して苦笑した。
 思い返してみると、自分の取った行動が恥ずかしすぎてしょうがない気がしてくる。いや、楽しかったんだけどさ。
 飲みきったパックをごみ箱に放った彼に、ポカリと解熱剤を手渡した。さすがにそのままの体勢では飲めないと判断したようで、不満げな様子を見せながらもきちんと起き上がって受け取る。
 薬を飲み終えて寝転がった彼は、横向きの体勢で丸まると、すぐに微かに荒い寝息を立てはじめた。
 そっと手を伸ばして背中を撫でると、少しずつ息が整い、やがて規則正しいそれに変わった。安心して緊張が解けたかのように、ふぅっと身体から力が抜けて眉間に刻まれた皺もなくなる。

……さっさとよくなれ、ばーか。

 こっそりそう呟いて、僕は眠っている彼のボサボサの髪を手櫛で梳いたのだった。

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