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誕生日 3

竜原さんリクエスト
お誕生日おめでとうございます

会部、幼馴染





 チャイムを鳴らすと、少しだけ時間を置いてドアが開いた。
「随分遅かったね」
 開口一番、奴はそう言った。約束を交わしたわけではないが、奴の中で俺が尋ねてくることは規定事項だったらしい。
「……なんだい、その荷物」
「やる」
 目の前に差し出すと、奴は困惑気味な表情で俺が買ってきた両手に一抱えほどある荷物を受け取った。
 結局何がいいのかよくわからず、こいつが過去に好きだと言ったものを適当に買ってみた。もしかしたら少し多いかもしれないと頭を掠めたのは五店舗のあたりだっただろうか。
「ええと、……ありがとう?」
 なんだか釈然としない顔をしたまま礼を言う姿は、どこか困っているというか戸惑っているようにも見える。少し頬に赤みが差して見えるのは気のせいだろうか。
「上がってくれ」
 ぶっきらぼうにそう告げると、奴は手に持った包みを抱え直して踵を返した。その後に続いて部屋に入る。
「これ、開けていいかな」
「好きにしろ」
 そう答えると、奴は紙袋の山を崩しはじめた。手早く仕分けて、半分ほどを冷蔵庫へ持っていく。残りはサイドテーブルに詰まれた。
 くすくすと楽しそうに奴が笑う。
「どれも美味しそうだけど、こんな量だと一人じゃとても食べきれないね」
「じゃあ残せばいい」
「……そういう返し方をするのか、キミは」
 奴が突然不満げに目を眇めた。さっきまでは機嫌がよさそうに見えたが、いったいなんなんだ?
「どうした?」
「キミも手伝えよ」
 甘ったるい菓子を俺に食えというのか、冗談じゃない。無理をすれば食えないでもないが、甘いものが苦手だと重々承知の上でそんな風に嘯くのだから性質が悪い。
「それはごめんだ」
「少しくらい譲歩しようっていう気持ちがないのかい?」
 譲歩した結果、こうやって金も手間も時間もかけてやってるんだろうが。
「まあいいけどさ」
 シングルベッドに、ぽすんと軽い音を立てて座ると、奴は俺に向かって手招きをした。狭い部屋の中、大の男ふたりが座れるスペースなど限られているから必然的に俺はその隣へ腰掛ける形となる。
 じっと、覗き込むように視線を合わせてくるそいつの目が、やたらと挑戦的な強い光を帯びている。
「日付、もうすぐ変わるね」
「……ああ」
 気付けばあと十秒かそこいらで、隣の幼馴染は俺より先にひとつ年上になる時間だ。
「キミは僕の欲しいもの、くれるのかな」
 そう呟いたそいつの視線に射竦められて喉が鳴った。
「だから……」
 何が欲しいんだ。
 そう尋ねようと思ったが、聞ける空気じゃなくて口を閉じる。その間もずっと、奴はただじっと俺を見つめていた。
 思わず視線をそらしかけた瞬間、それより早く、ふっと奴が視線を俯ける。
 カチ、と、時計の針が0を指し示した。
「おめでとう」
 柄にもないとわかってはいるがお定まりの言葉を口にすると、奴がへにゃりと相好を崩した。
「ありがとう」
 ちょうどいい位置にあった頭を撫でれば、猫が喉を鳴らすような顔になってゆったりと目を閉じる。心持ち顎を上げたそれは、まるでキスをねだるような体勢にも見えた。あまりに無防備な姿に、思わず手が止まる。
「どうしたんだい?」
 触れる手を離すことも出来ず固まった俺に、訝しげな声が投げかけられる。
「……いや、別に」
 そろりと手を外すと、それに合わせるように目が開いた。どこまでも真っ直ぐに俺を捕らえて離さない視線の強さに縛られる。
「で、何が欲しいって?」
「なんだ。結局わからなかったのか」
 キミって意外に鈍感だよね。
 くすくす笑いながらそんな風に嘯く。別にこちらを責めるつもりはなさそうだ。
「あんなのでわかるわけないだろ」
「そうかなあ。結構わかりやすくしたつもりだよ」
「知るか」
「まあ、来てくれただけマシだと思うことにする」
 不意に、距離を詰められる。吐息までかかりそうな近さにぎょっとした。身を引きかけた寸前、そっと手を重ねられて心臓が跳ねる。強い力で抑えられているわけでもないのに、動かすことが出来ない。
 へらへらと笑いながら、奴はこう続けた。
「そうだなあ。とりあえずキスでもしてもらおうかな」
「何言ってるんだ、お前。バカか」
 間髪入れずにそう返せたのは、我ながら上出来だったと思う。浮かべた笑みが、いつものように皮肉げなものだったかまでは自信がない。
「馬鹿なこと言ったつもりは、ないよ」
 妙に挑戦的な視線に射竦められる。
「キミにとって僕は、単なる友達でしかないのかな。勘違いしてたなら、謝らなきゃいけないけど、」
 ふっと目を眇めて俯いた表情が、なんだか切なげな頼りなさを感じさせてどこかがきしっと痛んだ。
「単なる友達が嫌なら、親友とでも呼んでやろうか?」
 その言葉は半ば自分を揶揄する自嘲的なものだったが、言わずにいられなかった。
「それだけかい?」
「それだけってなんだ?」

「キミは、僕のこと好きだろう?」

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