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誕生日 4

竜原さんリクエスト
お誕生日おめでとうございます

会部、幼馴染



 さりげない自然さでそう断じられて、思わず言葉に詰まった。
「……さっきから何を言ってるんだ、馬鹿馬鹿しい」
 苦々しげに吐き捨てれば、むっとしたように睨まれる。掴まれている手から伝わる熱にどうにかなりそうだ。
「そんなに言うほど馬鹿馬鹿しいことかい?」
 色素の薄い灰がかった目はまったく揺らぎがない。
「だってキミは僕が好きじゃないか」
 それでいて、まるで縋るような弱さを内包しているようにも見えた。
「それとも、」
 そして、不意にその弱さは露呈する。
「──僕がそう思い込みたいだけなのかな」
 さっきまでの気丈さはどこへいったのか、それともそんなものは元からなかったのか……俯いた奴の表情は見えない。だが、まるで飼い主に捨てられた子犬のようにしょぼくれているそいつを見ると、何故か胸を突かれた。
 こいつの発言を総合すると、ひとつしか答えが出てこない。さすがに都合が良すぎると、何度握りつぶしても湧いてくる考えに、……縋りそうになる。なんだって叶えてやりたい相手なのに、自分のことばかりが先に立ってしまいそうで怖い。
「何も言わないんだね」
 温かな手の平が、不意に離れていく。
 言わないのではなく言えないのだと、告げてしまえばよかったのかもしれない。だがプライドがそうはさせなかった。
「もういいよ。僕の勘違いだったんだ。キミは僕のことなんてどうでもいいんだろ」
 それでもさすがにそのセリフは見過ごせない。
「……じゃあお前は、俺がどうでもいい奴のために動くと思ってんのか」
「そ、それは……」
「わざわざ金かけて時間割いて、どうでもよかったら割に合わねえよ。馬鹿馬鹿しい」
 どうでもよければ、誰がここまでするか、バカが。
 わざとらしいほど深い溜息をつけば、不貞腐れたようにそっぽを向いてしまう。
「ただの友達なんだろ。あ、親友だっけ」
 吐き捨てるような言葉に少し怯みそうになったが、なんとか押し留まる。1
「じゃあなんて言えば満足するんだ。言ってみろ」
「別にいいよ。僕が勝手に勘違いしただけだ。でも、」
 悔しそうに睨みつけた目の眦に、涙が浮かんでいるように見えるのは気のせいじゃない。
「原因は全部キミにあるんだからな」
「どういう意味だ」
「……キミが優しいのがいけないんだ」
 悔しそうに顔をゆがめて、微かに目元を赤く染めて、泣きそうになりながらも気丈に言葉を続ける。
「男同士だし、きっと僕の思い込みだってわかってたけど、……当たり前みたいに他の人にするより優しくされてたら、期待するに決まってるじゃないかっ」
 ぎゅっと目を瞑った途端、はらりと頬に涙が流れた。
「だから僕は悪くない!」
「そうか」
 柔らかな髪を梳くように頭を撫でてやると、ぽろぽろと大粒の涙が頬を伝う。それを拭ってやれば苛立たしそうに手を払いのけられた。そいつが見せた噛み付きそうな視線に一瞬怯んだが、威嚇して毛を逆立てた子猫のような風情に、自然と頬が緩む。
「好きじゃないなら、そんなのしなくていい! そういうことするからこっちだって間違えるんじゃないかっ」
「悪い」
「……っ」
 暴れる身体を無理矢理抑え付けて、唇を合わせた。
「ん、──んぅっ」
 俺の腕から逃れようともがく、細身の身体に逆に煽られる。自分を抑えるので精一杯だ。
「っはぁ……」
「……とりあえず、キスだったよな」
 後は何が欲しい?
 耳元で囁けば、ふるりと腕の中の身体が震えた。
「ありがとう」
 その声は硬い。
「でも同情なんていらない。離してくれ」
「嫌だ」
「な、なんでだよ……もういいって言ってるだろ。からかってるのかい? だったらもう充分だろ」
 涙混じりの震える声がどうしようもなく愛おしくて、抱き締める手に力を込めた。
「お前は間違っちゃいないし、何も悪くない。俺が全部悪かった」
 ゆっくり背中を撫で下ろせば、強張った身体から徐々に緊張が抜けていく。拒まれないことでやっと俺はこの状況を信用した。

「好きだ」

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