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Personal-White-

A5 P36 400円  20080113発行 VOICES
 お付き合い前提、キョンに甘い古泉×やきもちキョン(18禁)
 文章:あくあ 表紙・口絵:長谷川楓さん
楓さんの表紙と口絵は必見です、かわいすぎる…

書店:ガタケットSHOP




サンプル
表紙2



 週末独特の、どこかゆったりと流れる空気の中に西日が差し込む。
 ぱたん、と長門が本を閉じた。
 その音を合図に、緩やかに俺達は帰り支度をはじめる。いつの頃からかは最早忘れてしまったが、特に示し合わせたわけではなく生まれた、SOS団での不文律だ。
 手元のカルタヘナは、大きく水をあける形で俺のほうが有利だ。結果は既に見えている。これ以上続ける必要もないだろう。というわけで、片付けは古泉、お前に任せた。これくらいは勝負に負けた(と推測されるであろう)奴にやらせても罰は当たるまい。
 古泉は、仕方ありませんね、と言いたげな慇懃無礼を絵に描いたような表情になってくすりと笑ってみせた。なんだ、その人を小馬鹿にしたような態度は……本当にむかつく奴だな。
 男にしては細くて長い、器用そうに見える癖に実際には不器用なことこの上ない指先が、カードを一枚一枚丁寧に揃え、そこかしこに散らばった駒を集めていくのをぼんやりと眺める。
 どうしてこいつは、どこもかしこも整っているんだろうか。個々のパーツからして、その辺を歩いている男子高校生とは随分と隔たりがあるように見える。言うまでもなく、一山いくらの凡人の俺とは、いっそ呆れてしまいたくなるくらいに大違いだ。神様とやらが本当にいるのだとしたら、きっとよっぽどうっかりしているか、どうしようもないほど不公平な存在だろうと俺は確信している。それがハルヒなのかどうかはこの際知ったことではない。
 ボードを6つのパーツに崩し、それぞれを規定の位置へと片付け終えた古泉が、俺のほうに視線を寄越した。
「では、僕達は外に出ましょう」
 輝かんばかりの白い歯を見せつつ、芝居がかった動作で手をドアへと指し示す古泉に閉口した。
 なんでそうやることがいちいち大袈裟なんだ。外人でもあるまいし。
 普通の奴がやったら嫌みったらしいだけで終わるであろう動きが、古泉にかかるとまるでそれこそが正しいかのように見えるのも、なんというか複雑な気分だ。
 まあ、廊下へ出ることに対して、もちろん異議はない。ここに俺たちが居座っていると、朝比奈さんがいつまでも着替えることができず、ひいては朝比奈さんの帰宅時間に悪影響を及ぼしてしまう恐れがあるからな。
「じゃあ、外に出てますね」
「ごめんね、キョンくん、古泉くん。なるべく早めに着替えますから」
 声をかけると、朝比奈さんが申し訳なさそうにこちらに向かって頭を下げる。
いえいえ朝比奈さん、あなたが謝るような必要はどこにもありませんよ。今日もメイド服がとてもよくお似合いでした。眼福です。淹れていただいたお茶も大変美味しかったです。
 廊下に出ると、先程までストーブの熱で暖気を養っていた体が、冷たい外気にさらされ、一気に熱を奪われた。尋常じゃない寒さに、反射的に体がぶるっと震える。
「さみぃ」
「本当ですね」
 そう返事が返ってはきたものの、実際には古泉の言葉はどうも実感が伴っていないようにしか見えない。
 それというのも、色々と着込んだ挙句に亀が甲羅に潜るかのように体を縮こまらせた俺とは対照的に、古泉がフラミンゴの立ち姿のように背筋をピンと伸ばして寒さなんぞどこ吹く風という風情でいるせいではないかと思われる。
 防寒具と言えるものは、せいぜいすっきりした七部丈の薄手のコートくらいで、マフラーや手袋すらつけていない。今日のような極寒の日には、見ているだけで寒々しいことこの上ない服装だ。
 実は寒いだなんて、これっぽっちも思ってないんだろう、お前。
「そんなことはありませんよ。僕はどちらかと言うと寒がりです」
 嘘をつけ。そうやって明るい偽善者面で笑う余裕ありげな様子は、とてもじゃないけど寒さを耐え忍んでるようには見えんぞ。
「実をいうと」
 すっと古泉の顔が近くに寄せられる。近い、いくらなんでも近すぎる。
 内緒話にしても、もう少し離れたらどうなんだ。誰が通るかもわからないような場所で、息がかかるほどの近さというのは正直どうなんだ。別に二人きりになれる場所なら構わないといいたいわけではないからその辺は勘違いしないでもらいたい。
「涼宮さんがイメージする『古泉一樹』として、極度の寒がりというのはそのイメージを崩す恐れを内包しています。暑かろうが寒かろうが、いつでもどこでもにこやかかつスマートに。それが、僕に対して与えられているキャラクターなのだそうですよ」
 またハルヒか。ご苦労なこった。
 それにしてもハルヒ……お前、いくらなんでも古泉に夢を見すぎじゃないか?
「僕に対してというよりも、謎の転校生に対して色々求めるものがあるのだと思いますが……それと、SOS団の副団長としてふさわしくあれ、という考え方があるのではないかと」
 古泉お得意の作った薄笑いを貼り付けたまま、自称寒がりの超能力者は飄々と続ける。
「だいぶ慣れましたが、機関からマフラーや手袋すら却下されたときはたいへん困りました。冬ともなるとああいったものを手放したことがありませんでしたので」
 明るく言ってのけながらも、この時ばかりはなんだか声に覇気がないように聞こえたのは、俺の気のせいなんだろうか。
 茶化すように大袈裟な溜息をついてみせる古泉に、ほんの少しの同情心が湧いた。
「お疲れさん」
 俺のねぎらいの言葉に、一瞬虚をつかれたような顔を見せてから、古泉は破顔した。
 さきほどまでのいかにも作り物めいた笑顔とはまるで違う、心底嬉しそうな、滅多に見せることのない笑い方に心臓が跳ねる。
 ちょっと待て、なんだって俺が古泉ごときにこんな風にどきどきしなけりゃならないんだ。ありえん。断固抗議する。これは、そう、ただ単に、見慣れないもんを見ちまったせいであって、他意はない。ないったらない。
「あなたにそうやってねぎらってもらえるのでしたら、この立場もそんなに悪いものではありませんね。どうせならば、せいぜい前向きに考えることにするとしますか」
 そう囁いて、古泉は一歩後ろへ下がった。
 ごく普通の友人同士にありがちな距離に戻ったことで、俺はほっと胸を撫で下ろし、ほっとしたことによってどうやら緊張していたらしい自分に気がついて、なんとも言えない微妙な気分になった。
 まあ、なんというか、他人が近くにいると緊張してしまうという経験は誰しもあることだと思う。ただそれだけのことだ。別に、このにやけきったありきたりなハンサム顔じゃなくても、あんな距離感で話したら誰が相手でも少しくらい緊張するさ。
 文芸部室の戸が開いた。
「あら、あんた達まだいたの? 静かだから先に帰ったかと思ってたわ」
 朝比奈さんの着替えが終わったのだろう、廊下へ出てきたハルヒが開口一番そんなことを言い出した。
 おいおい、俺達はいつもちゃんと待ってるだろう。いきなり先に帰ったりはしないさ。
「あたし達これから買い物して帰るから、先に行っていいわよって言ったじゃない」
「聞いてねえよ!」
「そうだったかしら? まあちょうどよかったわ。これ返してきてちょうだいね」 
 ハルヒはそう言うが早いか、俺の手の中に何かを押しつけてきた。
「これって……」
「部室の鍵よ。職員室まで返しに行くの面倒だったのよね。あんたがいてちょうどよかったわ。さ、有希、みくるちゃん、いきましょ。古泉くんさようならっ」
「え、え、いいんですかあ?」
「……」
「おい、ハルヒ、ちょっと待てよ!」
 ……もちろん、我らが団長様が、俺の言葉なんかでとまるはずはない。
 俺とハルヒを交互に見ながらおろおろする朝比奈さんと、どうしたものか考えあぐねているような表情の長門を引き摺って、さっさと下駄箱へ向かっていってしまった。
 展開についていけずその場に取り残された俺は、手の中に残された部室の鍵を見て深い溜息をつく。
「やれやれ」
 まあ、取り残されたとはいっても、古泉が隣にいるわけだが。
「ふふ。涼宮さんらしいですね」
 確かにこれ以上ないくらいハルヒらしい行動だよ。他人を振り回すことが当たり前だと思っている節がある。いや、もしかしたら振り回しているという自覚すら、あいつにはないのかもしれない。
 天上天下唯我独尊、世界一この言葉が似合うと言っても過言じゃないだろうね。まあ、いつも楽しそうで何よりだよ、まったく。
「さっさと返して帰るとするか」
「そうですね」
 イエスマン古泉の返答を待たず(どうせ返ってくる答えなんて決まっているさ。そうだろう?)俺は職員室へと向かって歩き出そうとした。

 その時、高く響く可愛らしい声が廊下に反響し、俺たちを呼びとめた。

「あ、あの……っ」
 声のした方向に顔を向けると、朝比奈さんには遠く及ばないものの、目鼻立ちのくっきりしたなかなか可愛らしい容姿の女子生徒が、ほんのり頬を染めて何やら思い詰めたような顔をして佇んでいた。

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