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初詣

会部 ちゃんとしてないお付き合い前提





「あけましておめでとうございます」

 時が変わると同時に異口同音に発せられた言葉に、いつも傲岸不遜な彼でも、こういう時はやっぱりかしこまったりするんだなあと少し面白い。自然と笑ってしまった僕を訝しそうに見る彼に、なんでもないよと手を振った。
「天満宮行くぞ」
「えええ、混んでるし嫌だよ」
 ……うーん、ああいうのに行きたがると思ってなかったから結構意外だ。人混みなんてむしろ敬遠しそうな雰囲気なのに。
「今から行くわけじゃねえよ。4時くらいから動くぞ」
「なんでそんな時間?」
 僕の問いかけに対して、にやにや笑いながら「別にいいだろ」と返してくる。
 まあ……それで君の機嫌がいいならいいんだけどさ。新年早々、揉めるのも嫌だし。
 どうせ昨日夜遅くまで起きてて今日はだらだら昼寝したし、まだ全然眠くないのも確かなんだよね。不健康な生活してるなあ。こんな状況だと、確かにちょっとくらい外に出たほうがいいかもしれないと思えてくる。人が芋洗いになってるところに行くっていうのはなんだけど。
「まあ、いいよ」
 どうせ、僕が何か言ったって聞くわけないんだし。



 東西線に乗り込んで、さすがにこの時間だと人が少ないなあと思う。
扉が閉じて冷えた空気が遮断されると、風がない分暖かく感じた。錯覚だとわかってはいるけれど。
「寒くないか」
「平気だよ、君は?」
「そんなにヤワじゃねえよ」
 ……それはつまり僕がヤワに見えるってことなのかな。まあ、体力が君よりないのは認めるけどさ。
 駅についてホームに降り立つ。人はまばらにしかいない。
 あれ? 今日、元旦だよね? 天満宮って毎年すごい人じゃなかったっけ?
 頭の中でハテナマークが乱舞している僕の手を引っつかんで、彼は改札へと向かった。
「うわっ」
「ぼけっとしてんな、置いてくぞ」
 改札を出て、やはりまばらな(それでもまあいつもの人通りに比べたらずっと多いんだけど)人波を縫うようにして、さっさと彼は歩いていく。あのさ、コンパスが違うんだからもう少し加減してくれないかな。ただでさえ昨日君に酷使されたおかげでこっちは疲れてるんだけど。
 商店街をぐるっと抜けて、大門につく。ここまでまったく止まる事がなかったけど、さすがに境内は少しは混んでるかな、と思ったら全然空いていた。
「え、なんで……?」
 思わず呟くと、彼がちらっとこっちを見た。してやったりとばかりに、にやりと笑みを浮かべている。
「ほら、いくぞ」
 促すように引っ張られて、境内に入った。
 賽銭箱の正面に陣取って(さすがにここでは少しだけ並んだ)二人で手を合わせた。
 大阪天満宮は、学問の神様がいるところだ。これから受験を控えている彼が来たがった理由はなんとなくわかる。
 僕は既に推薦が通っている気楽な身分なので、とりあえず隣にいる人の分を願っておいた。クリスマスに僕が風邪引いたときに看病してもらったので、まあその分のお礼ということだね。
 どうせだからとおみくじの列にも並んでみる。
 さらさらした黒髪を一つに束ねた巫女さんが、にこにこしながらおみくじを引く箱を差し出してくれた。結果は「末吉」……これっていいのかな、それとも悪いのかな。
 彼はと覗き見ると、そこには「大吉」の文字が躍っていた。……うん、まあなんとなくわかってたけど、やっぱり君って無理やりにでも運を引き寄せるタイプだよね。
 屋台から流れて来るいい匂いに惹かれて、いくつか買い込んで歩きながら食べつつ、とりとめのない会話を交わした。
「あのさ、毎年こんなに空いてるのかい、ここ? すごく混んでるイメージがあったんだけど」
「どこも明け方はたいてい空いてる」
「へえ、すごいね。いいこと教えてもらったな」
 これだけゆったりお参りできるなら、毎年来ても良いかもしれない。いつも面倒で、家族に誘われてもパスさせてもらってた。どうも人混みって苦手なんだ。
「俺も来たのははじめてなんだが、本当に空いてるもんなんだな」
「え……?」
「聞いちゃいたが、面倒で来たことなかったんだよ」
 意外な言葉に驚いて、一瞬思考が止まった。
「え、じゃあ……なんで……?」
 わざわざこんなところに連れてきたんだい?
「なんでだろうな」
 楽しそうに応じる彼は、いつもと同じように余裕ありげな笑みを浮かべていた。それを目にして、ずるいよなあ、と溜息をつく。
 いつだって、振り回すだけ振り回してくるのがわかっているのに、それでも傍にいたいと思ってしまうのは、きっと彼のこういう表情や、思わせぶりな言動のせいだ。手の内で踊らされてるのは悔しいけど、しょうがない。
 どうせ何を考えてるかなんてわかるわけがない。それならいっそ、勘違いしとこうかな。僕と一緒来たかったんだって。
 ……うわあ、ありえない。
 思い浮かべたそれがあまりにも彼のイメージにそぐわなくて、口元が笑ってしまうのが抑え切れない。ただの気まぐれに決まってるのに。
 まあ、気紛れだとしても。
「かえろっか」
「そうだな」
 今、彼の隣に僕がいるのは確かで、割とそれだけで満足だったりする。。

 来年も、一緒に来れたらいいな、とひっそり思った。

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