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あたらしいせいかつ 16

会部




渋々迎え入れると、彼は部屋をぐるりと見渡して満足げな笑みを浮かべた。
「いい部屋に住んでるじゃねえか」
「狭いけどね、まあ住めば都さ」
 どうぞ、と言うのもなんだかなあ、と思っているうちに、彼はずかずか上がりこんだ。本当に傍若無人この上ない。
 どかりとベッドに腰を下ろした姿は、まるで彼こそがこの部屋の住人であるかのようだ。二年以上使っている僕なんかよりよほど馴染んで見える。
「コーヒーしかないよ」
「それでいい」
 インスタントのコーヒーを手に取って、いっそ5杯分くらいの粉をぶち込んでやろうかと一瞬思ったけど、それも子供っぽいような気がしてやめた。普通にコーヒーを淹れて、ついでに自分の分も作る。
 彼の分はブラック、僕の分には砂糖を一杯入れて、お盆なんてないからそのまま手で持っていった。
「飲んだらさっさと帰ってくれ」
「つれないな」
 ふっと笑った姿は、癪に触るほど決まっている。そのまま銀幕を飾れそうだ。
 彼のたわごとを完璧に無視して、自分の分のコーヒーをパソコンデスクへ置き、パソコンの電源をいれた。
「客を放ってメールチェックか?」
「呼んでもいないのに上がりこんでくるような奴を客だなんて呼ぶ気はないよ」
 間髪いれずそう返すと、くっくっと低く喉を鳴らして笑う声が響いた。どうでもいいけど笑いすぎだ。
 とはいえ。
 そうやって楽しげに笑う声を背に受けているうちに、段々怒っていることが馬鹿らしくなってきた。元々彼が悪趣味で性格が悪いことなんて僕は知っていたじゃないか。そうと知っていてずるずると普通のクラスメイトみたいに付き合ってきた時点で、僕の負け。既に今だって僕は、気勢がそがれると言うか、怒りを持続していられないとでも言うべきか、そんな気分になってしまっている。
 あっさり取り払われてしまった垣根を再び築いたところで、何事もなかったかのように除かれてしまうだけだろう。それがわかっていて無駄な抵抗を続けていることは馬鹿馬鹿しさの極地だ。認めたくはないけど……しょうがないか。
今日何度目になるのかわからない溜息をついて、僕は口を開いた。

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