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あたらしいせいかつ 15

会部




「ふざけてるわけじゃねえよ」
 そう言って彼は微かに顎をそらした。そうすると、眼鏡のレンズが蛍光灯の光に反射して、彼の表情がよくわからなくなる。
狭いワンルームマンションの廊下とはいえ、エレベーターの内部よりはよほど視界が開かれているはずなのに、なぜかさきほどまでいた密室よりも閉塞されている空間のような気がしてくるのはなんでだろうか。彼の笑顔を見ているだけでじりじりとよくわからない怒りとも焦りともつかないものが湧き上がってきて困る。
「何を笑ってるんだ」
 僕が発した怒りを滲ませた言葉にも、彼は余裕の態度を崩すことはない。まるで過去に時間を巻き戻したかのように、出会ったばかりの頃みたいないけすかない態度だ。クラスが重なってからこっち、積み重ねてきた好意なんかはとっくに霧散していた。
「面白いから笑ってんだよ」
 嘲笑に近い、僕を挑発するような言葉が、とても癇に障った。
 そんな態度を取られて黙っていられるほどお人好しじゃない。
「キミを家に迎え入れる気はないよ。傘なら貸してやっただろ、さっさと帰ってくれ」
 そう切って捨てて、返事を待たずさっさと廊下を歩き出す。こつこつ後ろで重なる足音については、無視することにした。
そう長い距離を歩くわけでもない。すぐに僕は自分の部屋の前に辿りついて鍵を取り出した。
鍵を鍵穴に差し込みながら、ぽそりと呟く。
「帰れよ」
「やなこった。今日は暇なんでな」
 そんなことをぬけぬけと言い出すことに、唖然とした。
「ずっと俺がここに突っ立ってられるほうが困るだろ、暇つぶしさせろ」
 背を向けたままなのに、にやにや笑っているだろう表情がありありと想像できてしまって、僕は溜息をついた。
 ちくしょう、かなわないなあ。
「わかった。でもさっきみたいなのは御免だ。約束してくれるよね?」
「まあ妥当なセンだろ」
ちらりと振り返ると、憎たらしいくらい想像通りのにやけた顔をした彼が、笑みを深めていた。
なんで僕がこんな目に……。
暗澹たる気持ちで、僕は本来ならば安らげる空間へ続くはずだったドアを開いた。

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