2ntブログ

プロフィール

あくあasえもと

Author:あくあasえもと
2/22生 東京在住
 
リンクは張るも剥がすもご自由に
ご一報いただけると嬉しいです!



倉庫(仮)

☆Pixiv☆
http://pixiv.me/emotokei(WJ、アニメ系)
http://pixiv.me/aquamilei(他、色々)

☆Twitter
emotokei
フォローお気軽に

☆skype
aquamilei
登録はお気軽に

☆mail
aquamilei@bf7.so-net.ne.jp


アンソロ・ゲストの執筆依頼は
とてもありがたいのですが
お受けできない場合があります
申し訳ありませんがご了承下さい

カテゴリー

ブログ内検索

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

あたらしいせいかつ 10

会部




 雨は、あの日を思い出す。しかもあの時と同じ、彼と二人きりというシチュエーションだ。思いがけず訪れた偶然に、僕はその場で固まってしまった。
細い雨がアスファルトに染み込むように、ほとんど音を立てず飲み込まれていくのを眺めていると、静かな雨に似合わない舌打ちが、隣から聞こえてきた。
「ついてねえな」
「え?」
 彼を見上げると、いかにも面倒くさいと言いたげな、苦渋に満ちた表情になっていた。
「どうかしたのかい?」
「走るのもかったりいし……仕方ない、濡れてくか」
 風邪引くことはないだろ、と言い置いてさっさと雨の中へ身を投じようとする彼を、慌てて追いかけて腕を取った。
「あ?」
 彼は目を丸くしながら立ち止まった。珍しい、というか見たことのない表情に、なんとなく満足感を覚える。
「傘、持ってないのかい?」
 僕が尋ねてみると、彼は軽く首肯した。あ、やっぱり。
「折り畳みだけど入っていきなよ」
 鞄から紺の折り畳み傘を出して促すと、彼は微かに戸惑ったような表情を作った。構わずに傘をぱんっと広げて、彼に差し掛ける。
「うちまで来てくれれば、そのまま貸すし」
「……いいのか?」
「何が?」
「いや、なんでもない」
 くつくつ笑い出したのが気にならないでもないけど、彼の行動はいつだって僕には理解できやしない。いちいち引っかかりを覚えてたらキリがないよ。
「俺が持つ」
「あ」
 ひょい、と傘を取り上げられてしまった。抗議の声を上げようにも、彼と僕の身長差を考えればそれは順当と言わざるを得ない。何せ、目を合わせようとしたら軽く見上げなければいけないくらいだ。たぶん15cmくらい差がある気がする。ずるいや。
 親からもらった体にけちをつけるわけじゃないけど、彼の隣に立つと自分の貧相さが際立ちそうで嫌になる。コンプレックスをちくちく刺激してくれるんだよなあ。それは身長だけじゃなくて、顔立ちも居住まいも、およそ全てに及ぶ。僕が勝てるところなんて何一つないんじゃないかと思えてきて、思わず溜息をついた。
「どうした?」
「なんでもない」
 返した言葉が、さっき彼が口にしたものと変わらないことに気がついて、なんか僕たちこんなのばっかだな、と微かに苦笑した。

<< あたらしいせいかつ 11 | ホーム | あたらしいせいかつ 9 >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP