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あたらしいせいかつ 9

会部




なんとなくそのまま連れ立って、僕たちは一緒に下駄箱に向かった。別にそれが嫌なわけじゃないんだけど、気まずくてついつい俯きがちになってしまう。気まずさを感じているのは僕だけだろうけど……それは決して彼のせいではなくて、むしろ僕自身の気分の問題だ。
僕たちは特に何か言葉を交わすでもなく、やけに長く感じる廊下を歩いていく。
「それにしても律儀だな」
 不意に沈黙が破られて、どきりとした。顔をあげると、紙パックのコーヒーに口をつけながら、こちらを見ている彼の視線とぶつかる。
「なに、が?」
「お前」
 ゆらゆらと紙パックを揺らして「これとか、」と言葉を続けて、にやりと人の悪そうな笑みを浮かべる。
「まあ、来期の予算がどうなるかはわからんが、お前に免じて多少融通しといてやるよ。どうせ予算組むとこまでは見るだろうからな」
「そんなつもりじゃっ」
「なんだ、予算いらないのか?」
 そう言われると、後輩のことを思えば言葉に詰まってしまう。とはいえ、そんなお願いをこちらからするのは憚られた。だってやっぱりそんなのずるい気がするし、だいたいそんな融通してもらうような仲じゃないと思うし。
「……予算がないのは困るけど、身の丈にあってれば充分だよ。だから別にキミが何かする必要はないね」
「ほう。あんだけ食って掛かってきたやつとは思えない殊勝な言葉だな」
「あ、あれは……っ」
 痛いところを突かれて、かあっと顔が熱くなって、彼から顔を背けた。うう、こうやってすぐ赤くなっちゃうのどうにかしたい……。
「もう、あんなの忘れてくれよ」
 あの時は必死だったから、なりふり構ってられなかったんだ。それに付随するあれもこれも、忘れておきたい出来事ばかりだ。
「便宜をはかってくれるって申し出はありがたいけど、キミに大したお礼ができるわけでもないし。なんせウチは弱小クラブなんでね」
「別に礼が欲しいわけじゃねえよ」
 じゃあ、なに?
 なんとなく聞くのが憚られて、僕は押し黙った。そうこうしているうちに、下駄箱に辿り着く。
「あ」
 中にいるときは気がつかなかったけど、外はしとしと静かな雨が降っていた。

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