2ntブログ

プロフィール

あくあasえもと

Author:あくあasえもと
2/22生 東京在住
 
リンクは張るも剥がすもご自由に
ご一報いただけると嬉しいです!



倉庫(仮)

☆Pixiv☆
http://pixiv.me/emotokei(WJ、アニメ系)
http://pixiv.me/aquamilei(他、色々)

☆Twitter
emotokei
フォローお気軽に

☆skype
aquamilei
登録はお気軽に

☆mail
aquamilei@bf7.so-net.ne.jp


アンソロ・ゲストの執筆依頼は
とてもありがたいのですが
お受けできない場合があります
申し訳ありませんがご了承下さい

カテゴリー

ブログ内検索

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

あたらしいせいかつ 8

会部




 これでもう帰ってたら間抜けだなあ。
 ぼんやりそんなことを考えつつ、廊下の角を曲がった途端、いきなりぬっと目の前に何かが現れた。
「うわっ」
 慌てて後ろに下がろうとしたら、足が縺れて手に持っていたものをぶちまけそうになる。たたらを踏んでどうにか止まったけど、危なかった……すごいヒヤッとした。寿命縮んだ。
「……何してるんだ」
 呆れたような、苦笑しているような、低くて聞き取りやすい声が、すぐ近くで聞こえる。
「帰ったんじゃなかったのか?」
「あ」
 何かは、彼だった。まだ帰ってはいなかったみたいだ。
 もうこれから帰るところです、と言わんばかりのシチュエーションだけど、とりあえずまだいたことにほっとする。
「これをキミに渡そうと思って」
 持っていたものを差し出すと、彼は怪訝そうにそれを覗き込んだ。
「……コーヒー?」
「うん」
 僕がもっているのは、中庭の自販機で売っている安っぽい紙パックのコーヒーだ。彼の眉間の皺が更に深くなった。
「なんで俺に?」
「ええと……」
 うーん、なんか改めて言うとなると、微妙に照れる。けどまあこんなところで延々話をするのもなんだし、と意を決して口を開いた。
「予算の件なんだけど……本当に、助かったんだ。これでなんとかなりそうだよ、ありがとう。ちゃんとお礼言ってなかったなあと思って」
 だから、と渡すと、彼は素直にそれを受け取ってくれた。
「そうか、よかったな」
 そう口にした彼を見て、僕はその場で固まった。
「じゃあ、さっさと帰るぞ」
「あ、う、うん」
「どうした?」
僕を促しながら胡乱げにこちらを見やる彼に、僕は「なんでもない」と返すのが精一杯だった。
彼が浮かべた微笑が、あまりに柔らかくそれまでの彼のイメージを覆しかねないものだったせいで、調子がおかしい。嫌で嫌でどうしようもないって思ってたのに、あんな風に『よかったな』なんて、実感こめて言われたら……なんか、キミがすごくいい奴みたいに思えてきちゃうじゃないか。そんなの、困るよ。あんなことしたくせにいい奴だったりしたら困る。
友達になりたいとか、思いそうな自分がいるのが、すごい困る。

<< あたらしいせいかつ 9 | ホーム | イベントお疲れ様でした~ >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP