2ntブログ

プロフィール

あくあasえもと

Author:あくあasえもと
2/22生 東京在住
 
リンクは張るも剥がすもご自由に
ご一報いただけると嬉しいです!



倉庫(仮)

☆Pixiv☆
http://pixiv.me/emotokei(WJ、アニメ系)
http://pixiv.me/aquamilei(他、色々)

☆Twitter
emotokei
フォローお気軽に

☆skype
aquamilei
登録はお気軽に

☆mail
aquamilei@bf7.so-net.ne.jp


アンソロ・ゲストの執筆依頼は
とてもありがたいのですが
お受けできない場合があります
申し訳ありませんがご了承下さい

カテゴリー

ブログ内検索

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Co-dependence

A5 P60 600円  20090814発行
 会長×部長 R18
 表紙:水戸幸村さん
 女にだらしない最低男とおひとよしなヤンデレのおはなし
 会長が女の子とっかえひっかえだったり部長が非DTだったり
 いつも以上に人を選ぶ本だと思います、ご注意ください

サンプル


138.jpg

「……しまった」
 苦手な受験科目にも力を入れなければと参考書を買いに来たはずなのに、本屋を出た今、僕が手にしているのはとあるスクリプトの教本だった。明らかに僕が必要としているものじゃないけれど、そういえば次に後輩たちが作る予定の新作はこれを使うんだよな……と思ったら、いつのまにか手にとって会計していた。現実逃避しすぎだ。それでも買ってしまったものは返せないからしょうがない。
 参考書を買う分のお金が教本に化けたので、いったん家へ戻ってから図書館へ向かうことにしようと決める。図書館なら参考書の類は山ほどある。貸出禁止だから館内で読むかコピーするしかないけど、まあ光熱費の節約と思えば通うのも苦にはならないはずだしね。
 そう自分に言い聞かせながら、僕は帰路に着いた。
 ……それにしても、暑いなあ。今日の最高気温、何度だろう?
 じんわりと汗が噴き出て、つうっと背筋を伝う感触が気持ち悪い。風がないせいもあって、生温い空気が肌に纏わりつく。じりじりと焦げるような日差しがアスファルトに反射して、暑さを増していた。外に出るにしても、時間をもう少しずらしたほうがよかったかもしれない。
 そんなことをぼんやり考えながら歩いていたときのことだ。
「何ぼけっと歩いてるんだ?」
「うわっ」
 背中に衝撃を受けて思わずよろけると、ぐっと腕を掴んでふらついたところを支えられた。そのまま後ろに引き寄せられれば、後ろにいた人物の胸に倒れこむ。
「……何してるんだ」
「そ、それはこっちのセリフだよっ!」
 振り返って睨みつけると、はたしてそこには幼馴染の同級生が立っていた。トレードマークの銀縁眼鏡が、太陽の光に反射してきらりと光る。どこか冷たく見える容貌には、今はそれを打ち消すどこか楽しそうな笑みが浮かんでいた。
 その笑みに、心臓がどくんと高鳴る。
 視線をさりげなく外しつつ、彼の手から逃れた僕が歩き始めると、その隣を彼もゆったりと歩み始めた。
「危ないなあ、転んだらどうするんだ。いきなり叩くなよ」
「そんなに強くしてないだろ。あんなので転ぶんだったら一度病院行って見てもらう必要があるぞ」
 そんな風に軽口を叩きあいながら、僕たちは自然と連れ立って歩く。僕と彼の家は近いから、こうやって偶然出会うことも、そういうときに一緒に帰るのも、ある意味当たり前のことだった。
「暑いなあ……」
「今年一番の暑さだってな」
 彼の言葉にげんなりする。
 身体中の水分が搾り取られそうだ。早く部屋に帰って空調のきいた室内でゆっくり休みたい。そう考えて、図書館に行って勉強するならあんまりゆっくりもしていられないことに気付いて嘆息した。
「どうした?」
「うーん、別に大したことじゃないんだけど……図書館行くのかったるいなあと思って」
「何か借りるのか?」
「借りるっていうか、勉強しに」
 そう告げると、お前真面目だからなあと返された。参考書を買うはずのお金を無駄遣いしたなんて、とてもじゃないけど言えない。
「キミは、何をしてたんだい?」
「ん? 女と遊んでた」
「……へえ、受験生だっていうのに随分余裕だね」
 思わず刺々しくなった言葉に、彼はにやにや笑うばかりだ。推薦を受けられる範囲で無理はしないと決めている彼は、成績に血道を上げる必要がない。塾や予備校に通っているわけでも、家庭教師をつけているわけでもないのに、彼の成績は幼い頃から僕とほとんど変わらない。こちらは本気で勉強しているにも関わらず、かなわないことも往々にしてあるくらいだ。きっと、元々の頭のつくりが違うんだろう。
「羨ましいなら紹介してやるぞ?」
「遠慮しておく。僕はキミみたいに余裕がないんだ」
 それに、彼の境遇は羨ましくなんてない。
 もしも恨みがましく聞こえたのだとしたら、それは……。
 ハッとなって、思考を振り切った。考えていけないことを考えそうになるのは、溶けてしまうんじゃないかと思うようなこの暑さのせいだろうか。
「余裕あるのは俺だけじゃないけどな。学校休みに入ってから、昼間全然ラブホ空いてねーよ」
「ああ……」
 彼が振ってきた下世話な話題に苦笑する。
 ちょっと出れば遊ぶところはいくらでもあるんだけどね、そのちょっと出るのが億劫なのか、夏場は確かにこの辺りのホテルが埋まるという話はちょくちょく聞く。僕はまあ一人暮らしだからあんまりそういうので困ったことはないんだけど……実はそういう付き合いをすることになってはじめて、自分のテリトリーに他人を入れるのがすごく苦手だと気付いてしまったのは記憶に新しい。それで結局当時の彼女とはぎくしゃくして別れてしまった。
 悪かったなあ、と今でも思う。
 告白されて嬉しかったのは本当だけど、他人としか思えない相手と付き合うのはルール違反だよね。
「でもそれはしかたないよ」
「まあな。お前はいいよな、女連れ込み放題で」
「いや、キミじゃあるまいし連れ込まないよ」
 彼の恋愛を見ていると、ルール違反だらけだと思う。一度として連れている女の子が同じだったことがない。それでもいいと言わせてしまうくらい、女の子から見て魅力的なんだろうね。それを……身をもって理解してしまっている自分がいるのも確かだった。
 さっき彼に掴まれた箇所が、熱を持ったように疼く。
 こんなの絶対に気付かれるわけにいかない。
「場所ねーときついよなあ」
「普通に遊べばいいじゃないか。海とか映画とか、」
「間が持たねーよ。ホテルだったらセックスだけですむだろ。そういうのだと会話しなきゃなんなくて面倒すぎる」
「ひどい言い草だね」
 そして、その酷い言い草に安心してしまう僕はもっと酷い。会話をするのも面倒な相手なら、きっと本気じゃない。
「そういう付き合い方はやめたほうがいい気がする」
 彼に本気の相手がいないと知って、ほっとしてしまった僕には、本当は彼を詰ることなんて許されないけど、ぽつりと口にした言葉は本心でもあった。あっちこっちふらふらしてるから、こっちだって諦めきれないんだ。
「別に無理矢理やってるわけじゃない」
「それは知ってるけどさ」
「面倒なんだよ、誰かひとりに決めるとか」
「……そっか。まあ、なんとなくわかる気もするけどね」
 この分だと、あの噂は本当かもしれない。
 セックスした後に付き合って欲しいと言った相手に、同じ相手は二度と抱かないと答えたとか、どんな興味の湧かない相手でも誘われれば抱くとか、そんな噂を聞いたことがある。僕は彼の友達だけれど、ちょっとフォロー出来なかった。彼ならやりそうだし、言いそうだ。
 いっそ僕が女だったら、振られることを前提に一度だけ抱いてもらって、全てを諦めることだって出来るかもしれないのに……なんて考えてしまう辺り、どうかしていると自分でも思う。
 妄想を振り切って、軽く冗談を口にした。
「しばらく昼間は図書館行くから、ウチ使う?」
 彼が大きく目を見開く。
 え、何その反応?
 思わずこちらが怯むくらい顕著な表情の変化に戸惑いながらも、へらへら愛想笑いを浮かべてしまうのは僕の悪い癖だ。だけど、他にどんな顔をすればいいのかよくわからない。
「……いいのか?」
 ぽそっと呟いた彼の言葉の意味が最初わからず……だけどすぐにさっき僕が口にした話題だと気付いた。
 どくん。
 心臓が、うるさいくらいどくどくと鼓動を早める。
「あ、うん。別に……」
「じゃあ週にいくらか渡す」
 彼が口にした金額は、この辺のホテルなら休憩どころか毎日宿泊してもお釣りが来そうな金額で目を剥いた。
「え、いや、そんなにはいらないけど、」
「いいからとっとけ」
 僕の遠慮を一言の元に切り捨てて、彼はその場で月末までの部屋代として僕にお金を押し付けてきた。
 なんでこんな大金を持って歩いてるんだ、キミは!
 生徒会長をしていていつも遅くまで学校に残っている彼は、特にバイトをしているわけじゃなさそうなのにここ一年ほどずっと金回りがいい。実はそのことが心配だったりもするけれど、女遊びの激しさはともかくとして、それ以外に悪い噂は聞かなかったから触れずにいた。
「……あ、ありがとう。じゃあ……ええと、どうしたらいいかな」
「合鍵作るのはまずいか?」
「あー……うーん、別にいいよ」
 お互いに家族の顔も知っているような仲だから鍵を渡したとしても不安はない。何かあったとしても、どうせ大したものは置いてないしね。それに、……彼なら、いつでもウチに来てくれて構わない。
 鍵屋に寄って合鍵を作り、いくつか取り決めをして契約は終わった。貸す時間は、十一時から十七時まで、部屋の中のものには極力触らない、使うのは基本的にベッドとユニットバスだけで、台所は冷蔵庫以外使わない、そんな感じで条件を出し合って、また都合が悪ければ話し合おうということで合意した。
「じゃあ、はいこれ」
 出来上がったばかりの鍵を、彼の手に置く。彼はしばらくじっとそれをみつめていた。どうかしたんだろうかと不思議に思ったけれど、指摘するのも躊躇われた。やがて彼はキーホルダーを取り出して、ジャラジャラとたくさんの鍵を取り付けたそれに、僕の部屋の鍵を付け足した。
 その瞬間、なんともいえない奇妙な感覚に襲われる。
 ……僕の部屋の鍵を、彼が持っているという事実が嬉しい。他意はないのだとわかっていてもなお、どきどきする鼓動を止められなかった。


<< Fleur de Fleurs | ホーム | 生徒会長と喜緑さん >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP