A5 P36 400円
古泉一樹×朝比奈みくる 全年齢
ななみさんと合同
「花」がテーマの合同誌です
わたしはエンドレスエイトなテキストを書きました
お花がテーマということで、可愛くて儚いイメージ重視で
古泉をヘタレにするべく頑張りました(頑張りどころおかしい
わたしのみくるへの愛が溢れすぎた感じです
難しかったけど、がんばりましたー
書店:とらのあな
サンプル
暑い夏の盛り。
あたしは涼宮さんに呼び出されて、いつもの集合場所へ向かいました。古泉くんと長門さんはもう来ていたけれど、涼宮さんとキョンくんはまだ来てなくて、だからあたしは先に待っていた二人に向かって声をかけたんです。
「こんにちは」
「……」
「どうも」
長門さんはちらりとあたしを見たけど、すぐに視線をふいっとそらしてしまった。最近は随分慣れてきて、別に彼女は怒ってるんじゃないってわかってるんだけど、やっぱりちょっと淋しいし悲しくなる。
古泉くんはいつもにこやか。今日もにこやか。でもなんでかな? ちょっと疲れているように見えました。古泉くんがそういう風に見えるのってとても珍しいから、あたしは驚いてしまったんです。
だからあたしは尋ねてみました。
「古泉くん、疲れてるんですか?」
「え?」
優しい顔立ちが怪訝そうにあたしを見つめます。あたしも古泉くんを見ていたから、まるで見つめあうような形になってしまって少しどきどきしたの。どうしてどきどきするのかな?
あたしは古泉くんが苦手です。だって、機関のひとってなんとなく怖いんだもの。嫌いっていうわけじゃないんですよ。でも、怖い……、はずなんだけど……。
どうしてかなあ。今日は、怖くない。
昨日まではすごくすごく怖かったのに。ふしぎ。
「大丈夫ですよ。この暑さですからね。少し参っているのかもしれません」
そう言って表情を和らげた古泉くんは……うん、やっぱり怖くない。
「そうですか、気をつけてくださいねぇ」
「肝に銘じます」
古泉くんがあたしに笑いかけて、あたしはそれに笑い返す。何の気負いもなくそうすることができて、自分にびっくりした。
そういえば、長門さんのことも怖くない。
長門さんのことは古泉くんよりもっとずっと苦手なはずなのに、おかしいなあ。なんでかなあ?
長門さんは、情報統合思念体が地球人とのコンタクト用に作り上げたヒューマノイドインターフェイス……広義に解釈すれば宇宙人という存在。普通の人じゃないのです。見た目はあたしたちと変わらないけど、能力も思考も行動の概念も違うってききました。何かあると長門さんがパッと解決しちゃう。なんでもできてすごいなあと思うけど、憧れとかそういうものよりも、やっぱりあたしたちとは違うんだなあという気持ちが先に立って、長門さんが怖いの。
だけど今日は怖くない……。
自分自身の気持ちの変化についていけなくて、不思議に思ったけれど、それについて考える間もなく、涼宮さんがやってきた。
「みんな揃ってるわね! 感心感心」
太陽をそのまま具現化してるみたいに明るい笑顔に、ふわふわっとみんなの雰囲気が明るくなる。
「キョンはまた最後なのね。まったく……気は利かないし、トロくさいし、どうしようもない奴だわ」
そんなこと言ってるけど、涼宮さんはキョンくんのことが大好きみたい。なんでわかるかっていうと、言葉の端々が、あったかいんです。嫌いなもののことを話すときって、みんな冷たくて刺々しい言葉になるけど、涼宮さんがキョンくんについて話すときはそれがないの。だからわかるんですよ。
「彼も今頃は慌ててこちらへ向かっていることでしょう」
古泉くんが柔らかくフォローすると、涼宮さんはキリリと柳眉を吊り上げた。
「慌てて来るなんて当たり前よ! このあたしが直々に電話したんだからね。そうじゃなきゃ困るわ」
「……もうすぐ、」
「え? 有希、今なんか言った?」
涼宮さんが長門さんに視線を向けた瞬間、古泉くんが微かに目を眇めてふっと柔和な笑みを浮かべる。
「到着したようですよ」
古泉くんがそう告げるのと、涼宮さんの表情がパッと明るくなるのはほとんど同時だったから。
ほら、やっぱり大好き。
くすくすっと笑っちゃったけど、そういうことを言うと、どうしてかわからないけど涼宮さんは怒るから、あたしは何も言いませんでした。
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