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はろうぃん

会部ではろうぃん、あまめ




 なんかだいぶ寒くなってきた。十月も末だし当たり前のことなんだけど、僕は寒いの苦手なんだよね……さっさとあったかくなってほしいものだよ。なんて、ずいぶん気の早いことを考えながら出かける前にかけといた洗濯物を取り込んで畳む。乾燥機ついてて本当によかった。ついてなかったら絶対に干してるときに凍えると思うんだよね。
 まだ余熱であったかいふかふかのシーツと格闘しつつ、これは座ったまんまじゃやっぱり畳めないかなあ立ったほうがいいかなあ横着しすぎかなあと検討していると、BGM代わりにつけてたTVから「今日はハロウィンです! トリックオアトリート!」という声が聞こえてきた。とても嬉しそうな言いかたに少し気を取られて画面をみやると、目がくりっとした可愛いリポーターが、街中のハロウィン飾りを紹介して回っていた。声も結構可愛いな、好みかも。ハロウィンかあ……そういえばそんな行事もあったよね。あまり関係ないからスルーしがちだけど。お菓子をくれなきゃ悪さをするぞ、だっけ?
店員さんがお化けの格好をしている店なんかもあった。そういえば去年の長門さんの魔女姿かわいかったなあ。涼宮さん達こういうの好きそうだ。きっと何かやってるんだろうな。少しだけ羨ましい。もうとっくに部活は引退したし、元々あんまりイベントで盛り上がるようなことってなかったけどさ。
「どうした、さっきからぼーっとして」
 頭上から声をかけられて仰ぎ見るといつのまにやら彼がいた。伊達眼鏡越しにいぶかしげに覗きこんでくる姿にちょっとだけ悪戯心が沸いた。
 手に持っていたシーツをばさっと広げてひっかぶる。
「トリックオアトリート」
 ……。
 反応がない。無視することないだろっ。いやまあこういうふざけた遊びにのってくるような性格じゃないのはもちろん知ってるんだけどさ、なんだか僕が相当バカみたいじゃないか。
 ほんの少し気分を害して、かぶってた布を顔からどかした。その途端ばらばらと頭上から何かが降ってきた。
「うわっ何するんだい!?」
「お前が菓子くれっつったんだろうが」
「へ?」
 その言葉を聞いて手元に落ちてた包み紙を拾う。グレープ味のキャンディだ。他に散らばってるのも個包装された色とりどりのキャンディとかチョコとかだった。
「どうしたんだい、これ?」
「やろうと思って忘れてた」
「買ったのかい?」
「現生徒会より手伝ってくれた前生徒会長への礼、だとよ。安上がりなもんだ。ったく、いまだに生徒会の仕事させられるとは思わなかったぜ。あいつら俺が受験だって忘れてんじゃねえのか」 
ぶつぶつ言うのに納得しながら、悪いと思いつつ笑ってしまった。
「無理もないよ、仕方ないと思う」
 彼が就任するまではあってなきが如し、名前だけで半ば形骸化してた北高の生徒会。生徒の自主性を重んじるというスローガンを打ち出し次に会長になるだろうと目されていた人をあっさり下して会長職についたかと思ったら、即座にワンマンと言われてもおかしくないくらいの改革案を打ち出した。まずは予算のシステムを再構築、その手腕は予算を減らされた部活が文句も言えないくらいだった。
 威風堂々、そんな言葉がぴったり当てはまる尊大とも言える態度だったけど、さまざまな事柄に対して公約にそむくことなく躊躇わず着実に結果を出していく様子に批判の声はどんどん小さくなっていった。こと生徒会執行部内では心酔されてるといっても過言じゃない状態だ。彼のやり方を踏襲していくことを選んだ現生徒会としては、彼の指示を仰ぎたくなるのはしょうがないんじゃないかなと思うんだ。
「本当にもらえると思わなかったよ。ありがとう、もらうね」
 ひとまず礼を言って、手にしていた飴を口に含む。散らばった分を集めながら、酸味の強い甘さを楽しんでいるうちに……なんだか彼が意地悪く笑みを浮かべてるのに気がついた。嫌な予感がひしひしする。
「なんだい? にやにやしてないで言いたいことがあるなら言えばいい」
僕の言葉に実に楽しそうな口調で彼は答えた。
「俺にイタズラしたかったってわけか? ずいぶんと大それた考えだな」
「はぁ? 何を言ってるんだい……意味わかんないよ」
明後日な言い草を笑い飛ばしても彼の表情は変わらない。
不意にひょい、とシーツをとりあげられる。白いシーツをふわりと自分の肩にひっかけて、すっと眼鏡を外した。
「Trick or treat?」
素顔になって、浮かべた笑みはそのままにじっとこっちの目をまっすぐ射抜くように見据えてくる。それだけで僕があっさりと蛇ににらまれた蛙みたいに動けなくなる。この目に、弱いんだよなあ。
「な、なんにも持ってないよっ」
「じゃあイタズラだな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃあこれ!」
 集めた飴をそのまま押し付けたけど、差し出した両手首を片手でまとめて掴まれた。ざーっと血の気が引いてく気がする。にやりと笑う表情は心の底から楽しげだ。
「俺がやったやつなんかいらねえよ。バカ」
「うわっ何するんだい!」
 彼の空いてる左手が僕のネクタイをするりとほどいた。これは嫌な予感的中かもしれない。まだシャワーも浴びてないっていうのに!
「わかんなきゃ黙ってろ」
「……っ」
 口付けられて、気持ちより先に体が負けた。なんでキスだけでこんな気持ちいいかな。ありえないよ。
「甘い」
そう囁いた声の方がよっぽど甘い。反則だ……。
「飴のせいか」
「うん、まあ、そうだろうね」
「不味い」
 不機嫌そうな声とは裏腹にやたらと楽しそうなのはきっと気のせいじゃないよね。片手で器用にボタンを外されていって、溜息が出た。結局こうなるわけか。ああもうどうでもいいよちくしょうっ。
 僕の内心を読み取ったのか、手首を抑えてた手が外されて脱がすほうにまわった。ここからの抵抗はどうせ無駄だ。せめて一矢報いてやりたくて、僕がされたみたいにするりとネクタイを外してやった。
 少し驚いた感じの滅多に見れない表情に満足しつつ色々諦めをつけて、目を、閉じた。

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