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2010初詣

会部 初詣




「一月中なら初詣だし! だから行こう!!」

 凝り性な割にアバウトな小動物がそんなことを言い出したのは、松の内もあけてそろそろ下旬にさしかかろうという時期だった。
「でもさ、初詣って言ってもだいたいのひとが正月にしかお参りしないんだよね。実質的には最後のお参りって言ってもいいくらいなのに初詣って、何かシュールな気がするんだけどキミはどう思う?」
 そんなことを考える余力のあるお前をどうかと思ったが、口には出さずにただ肩を竦めるに留めた。
 マフラーを巻いているのに首元が寒いのは、外出時に義務付けられている髪のセットのせいだ。髪を下ろしたまま近くのコンビニへ買い物に出ただけで電話がかかってくる。……つくづく厄介なものに関わってしまったものだと、その時ばかりは心の底から思った。
 今日は薄曇りで、風が強い。
 寒風吹き荒ぶ中、人気のない場所を歩いているのだから当然ものすごく体感温度は低いし、吐く息だって白い。薄く眼鏡を翳らすそれを、強い風がすぐに散らしていった。風に中てられて、突き刺さるような寒さにぶるっと身体が震える。
 こんな状況だというのに、奴はひたすら上機嫌だ。
 普段はうちの炬燵で丸くなってるだけのくせに、この行動力はいったいどこから出てくるんだろうか? 鼻の頭が赤くなっているのが見て取れるから、とりあえず寒くないわけじゃなさそうだが。
 ……自分の家だと狭くて炬燵が置けないからと入り浸るし、その度にメシだの風呂だの用意する羽目になるし、こんな風に引っ張り回されるし、こいつといると本当に散々だ。そう考えているのに、──何故か突き放せない。その理由は考えないようにしている。
「僕はプログラミングコンテストでいい結果が出せるよう祈願するつもりだ!」
「……あれに出場できるのは工業系の学校だけだろう?」
 話に乗った後に、こんな言葉がするりと出てくるほど無駄なことばかり覚えさせられていることに腹が立ってきた。生徒会長としての知識がどうたらこうたら、あいつらの鬱陶しさときたら人後に落ちない。
「あんまり知られてないけど、実は他の学科からも参加はできるんだよ。勿論良い結果を残せるかって言ったら厳しいとは思うけど、もし成績が良ければ部に昇格できるかもしれない。無理だったとしても、参加したことは実績として残せるし、無駄にはならないと思うんだ。今年は長門さんもいるしね!」
 興奮気味に話す姿は、なんとなく実家に置いてきた飼い犬を思い起こさせる。こう……なんていうんだろうな。尻尾を振り回しながら、構ってもらえるのが嬉しいと全身で訴えかけてくる姿と重なるのだ。こんなことを口にしようものなら、臍を曲げてしばらく口もきかなくなりそうだが、俺がこいつから受けるイメージとしては概ねそんな感じだ。それでいて気紛れに人を振り回す辺りは、まるで人に懐きそうで懐かない猫のようにも思える。
 他意はないやりとりの中に、意味を見つけてしまうのは俺だけだ。
 気付かれないように小さく嘆息したところに、奴が尋ねてくる。
「キミはどんなお願いをするんだい?」
「そうだな……」
 ちらりと隣を見ると、答えが返ってくることを信じて疑わない表情のそいつと目が合った。あまりに真っ直ぐ向けられる視線に気後れしそうになる。
「お前には教えない」
「えええええっ!?」
「こういうのは、言うと叶わないんだろう?」
 だから言わない、と。
 そう告げれば「僕は教えたのに」とか「ずるい、横暴だ」とか、ひとしきりぶつくさ文句を言ってむくれてしまった。あからさまに憮然とした表情に、口元が微かに緩む。

 本当は「言わない」のではなく「言えない」のだと、告げられるはずもなかった。

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