19さん主催字茶にて椎川さんから素敵お題をいただきました
けもみみ会部 うさうさなふたり
ふわふわと真っ白な耳が揺れている。
そいつはこの世に怖いことや嫌なことなんてなんにもありませんとでも言いたげに、すやすや気持ちよさそうに寝入っていた。つついてもまったく起きる様子がない。
「おい」
声を掛けると、ぴくっと耳が揺れた。
「起きろ、俺は暇なんだ」
ぴくぴくっと長い耳だけは動いているけれど、相変わらず規則正しい寝息がすぴすぴ聞こえてくる。
「起きろっていってるのが聞こえないのか」
……まあ、聞こえていないんだろうが。
短く舌打ちして、揺り起こそうと奴の肩に手をかけたところで、ちょっとした悪戯心が湧き上がった。寝ている奴の首筋に、指を滑らせる。
「ん……」
微かに眉根を寄せてみじろぎしたのを確認して、うなじを軽くくすぐった。ひくりと喉が震える。
「……ぅ、ん」
悪くない反応だ。
にやりと笑みが浮かぶのを止められない。起きないお前が全面的に悪いんだ。覚悟しろ。
「ひ、ぁあ……っ!」
ふよふよと揺れ動く耳を食むと、一際高い声が上がった。
「あ、あ、ゃ、なに……ちょ……」
ああ、さすがに起きたか。
詰るような視線は困惑を含んでいる。状況が掴めていないせいで、抵抗もままならないようだ。奴の反応は気にせずに薄く血管の浮いた耳の先を舐めあげる。
「う、あっ……何して、やめ、──っ」
「黙れ、バカ」
お前が、悪いんだ。
ありえない感触に目を開けると、ふよふよ揺れるグレーの耳の持ち主が覆いかぶさっていた。
え、何?
「あ、あ、ゃ、なに……ちょ……」
耳に、耳が、なんか変だ!
くすぐったい? 熱い?
よくわからないけどとにかくなんか変だ、駄目だ。このままじゃ変になりそうで。
「う、あっ……何して、やめ、──っ」
「黙れ、バカ」
悪辣な笑みを浮かべた彼の頭上で、長い耳が僕を嘲るようにふわふわと揺れた。嫌な予感で、背筋がぞくりと戦慄く。
「え、あ……」
黙っていろと断じられてしまえば、僕が彼に逆らえるわけがない。押し返そうとした手が勝手に止まってしまう。
抵抗できない僕の耳に吐息が吹きかかり、低くて気持ちのいい声が吹き込まれた。
「いいこだ」
嫌な予感が最高潮に達した。こくりと息を飲めば、とても楽しそうに彼が笑う。だめだ、嫌だって……嫌だって言わないと……!
それでも結局のところ僕は彼を拒むことは出来なかった……とだけ、言っておこう。
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