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無題

会部 あまったれと世話焼き




「ったく……」
 風呂から上がったら、招いてもいないのに勝手にやってきた客人が、くぅくぅと気持ちよさそうな寝息を立てながらベッドのど真ん中を陣取っていた。いったいどういうことだと溜息をつきたくもなるというものだ。
 いささか乱暴に髪の水気を取りながら近付いていく。ベッドに腰掛けるとスプリングがきしんだが、起きる様子はない。見る者にきつい印象を与える瞳が閉じられているせいで、生来の童顔さが浮き彫りにされていた。そうやっていると、日頃の憎たらしい言動や行動をいくらか割り引いてやってもいいような気がしてくるから厄介だ。
「おい」
「ん……」
 頬をつつくと、嫌そうに身を捩った。なにやらむにゃむにゃと文句を言っている。
「何言ってるかわかんねーよ、日本語しゃべれ」
「うー……」
 揺り起こすと薄く目が開いたが、すぐに閉じてしまう。不機嫌そうに「ねむいんだよぅ」とか言っているが知ったこっちゃない。
「服着たまま寝てんじゃねえよバカ」
「うるっさいなぁ……」
 奴はもぞもぞと布団の中に潜り込んで俺の言葉から逃れようとしている。可愛くないことこの上ない。
「いいから起きろ」
 ぐっと抱き起こせば、奴はようやく目を開けた。それでも寝惚けてるのが如実にわかる状態である。ゆらゆらと左右に揺れて、今にもぱたりと倒れこみそうだ。その様子に俺は全てを諦めて、奴にパジャマ代わりのTシャツを放り投げた。
「せめてそれ着ておけ」
「んー……」
 頼りない生返事をして、ぷちんぷちんと覚束ない手つきでボタンを外していく。とろくさい動きにイライラして、そいつのワイシャツに手をかけると不満げにぶつぶつ文句を言われた。
「自分でできるよ、子供じゃあるまいし……」
「ああ、子供でももうちょっとマシだな」
「なんだよそれ」
 むっとしている様子だったがそれは無視して、手早くボタンを外してワイシャツを脱がした。その時、指先に直接奴の肌が触れたことに、少しだけ狼狽する。眠っていたせいか、体温がほんのりと高いのも災いした。
 出そうになった溜息をなんとか噛み殺して、シャツをハンガーにかけるためにその場を離れた。本当の理由はまた別にあったが、なるべくなら自覚しないでおきたいところだ。
「下も脱げよ」
「うん……」
 ベルトしたままでよく寝られるもんだ。神経の図太さに、呆れるのを通り越して感心してしまう。
 カチャリと金属の擦れ合う音がして、シュッとベルトが向き取られる。次いで微かな衣擦れの音がしたので振り返り……すぐに振り返らなきゃ良かったと後悔した。
「そこに置いとけ。あと、シャツ着ろ」
「うん」
 浮き出た鎖骨や薄い胸板から無理矢理目をそらす。そらした先の生白い足に、思わず嘆息した。寝具を藍や群青でまとめてるのが悪いんだな、これは。明日辺りリネン類を買い足しておくか。オフホワイト辺りなら、あそこまで肌が映えることはなさそうだ。
 のろのろとシャツを着るのを確かめて、声を掛けた。
「お前こっちで寝るんだろ。俺は居間で寝るから何かあったら声かけろ」
「やだ」
 やだってなんだ。
 頭痛がしてきそうな気分で振り返ると、猫を捨てようと段ボール箱にいれたらこんな顔で見上げられるんじゃないかという表情で、じっと見据えられた。
「……ちょっとこっちに来てくれるかい?」
 妙に真摯な声が気になって、そのまま部屋を後にするのが躊躇われた。仕方なく奴に促されるまま近付くと、近寄った途端腕を取られて強く引っ張られる。思いがけない動きによろめいて覆い被さるような形になった。
「何しやがる」
「……キミが、」
 ぎゅ、と袖を握った拳に力が篭って、その部分に深く皺が寄る。
「傍にいろって、言ったんじゃないか。それなのになんでどっかいこうとするんだ」
 尻すぼみになりながらも、不貞腐れたように言葉を紡いで、ふいっと目をそらす。
 ったく……。
「わかった。ここにいりゃいいんだな」
「うん」

 結局その夜は、なけなしの理性を総動員して、眠れないまままんじりと過ごす羽目になったのは言うまでもない。
 ……くそ、最悪だ。

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