A5 P60 600円 20090315発行
生徒会長×コンピ研部長氏 R18
短編連作4本、内ひとつはリメイクです
部長がわがまま、会長が最低、な感じ
ひどいの駄目ならオススメできません
表紙:
19様書店委託:
ガタケットSHOP 「チョコレート、食べに来た」
突然鳴り響いたチャイムに、宅配便でも来たのかとドアを開けると、そこに突っ立っていた男は開口一番そう口にした。
その男は、俺の幼馴染で……そして、恋人でもある。
「なんだって?」
「今日はバレンタインだからね。どうせキミは山ほどチョコ貰うくせに食べやしないんだろう? そんなのもったいないじゃないか。だから食べにきた。いいよね?」
質問の形式を整えた断定口調でずらずら並べ立てると、呆気に取られた俺を尻目に、奴は部屋にずかずか上がりこんできた。学校の奴らは、こいつがこんなに横暴でわがままな奴だなんて思ってもみないだろう。ったく、内弁慶にもほどがある。
「それとも、」
ちらりと上目遣いで見上げられた。色素の薄い灰がかった瞳が微かに潤んでいるように見えて、心臓が小さく跳ねそうになる。
「──これから何か、予定でもあるのかい? それならすぐに帰るけど」
さっきまでの強気な態度はどこへやら、おずおずと尋ねる姿は、飼い主に怒られるんじゃないかとびくびくしながら項垂れている子犬のようだった。思わず言葉が口をついて出る。
「いや、別に」
「そっか。だったらいいよね」
へらっと笑って、それまでのしおらしい態度が嘘のように、奴はさっさと居間へ消えていった。
いつものことと言ってしまえばそれまでだが、あまりのギャップに笑うに笑えないというか、笑うしかないというか……しょうがない奴だと心底思う。それを許してしまう自分自身も含めて。
「うっわ、すごいなー。年々数増えてないかい?」
居間から能天気な声が聞こえてきたので俺も向かうと、学校から帰ってきた後、適当に放置していた包みを何やらガサゴソと漁っている。
……まあ、どうせ食わないのは本当だから別にいいんだが、こいつの辞書には遠慮という文字がないのか。
「手紙とカードはどけておけよ。後で見る」
「わかったー」
「俺はシャワー浴びるからな」
「いってらっしゃいー」
浴室に足を向けかけて、そういえば、と思い当たった。
「ちょっと待て」
「何?」
漁っている手元を探って、過剰包装気味のチョコレートの山から、一際豪華に包装されていた箱を抜き出す。
「これ以外はいいぞ」
それをサイドテーブルに置いて、俺は再び浴室へ足を向けた。
制服をクローゼットにかけて、脱衣所でシャツと下着をを脱ぎ捨てる。寒いから湯に浸かることも考えたが、シャワーだけで済ますことにした。あまり待たせるとあいつの機嫌が悪くなりそうだ。こっちの都合なんて考えやしない思考回路と、なんだかんだでそれを許してしまう自分自身に、呆れた溜息をついた。
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