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covetousness

A5 P44 400円 20090503発行
生徒会長×コンピ研部長氏 全年齢
ナナメさんにおねだりしたイラストを元に
かなり糖度の高い連作短編を三つ
ハルヒちゃんネタもあります

表紙:ナナメさん

書店委託:ガタケットSHOP 95.jpg

 なんだか最近ついてなかった。
 親友だと思っていた相手には避けられるし、ちょっと風邪気味でふらふらしてるし、たまたま予習してなかった授業では当てられるし、体育あるのはわかってたのに体操着忘れるし、財布にお金入れるのも忘れてきたし、注意力が散漫になっている自覚もあった。
 だからさっさと家に帰ろうと、急いでいたんだ。

「キミ、待ちたまえ」

 後ろから声をかけられたことに気が付いてはいた。
 だけど考えてもみてほしい。声を掛けてきた相手は、最近ずっと僕を避けていた男で、口を聞くどころか視界に入るのも迷惑といわんばかりの態度を取り、こちらから思い切って声を掛けても無視されるような状況がずっと続いていたんだ。
 古い付き合いなのにあんまりじゃないかと詰っても、返ってくるのは冷たい視線だけで、……そんな状態がずっと続いていたんだから、まさか自分に対して声がかかるだなんて思わないのは当たり前だろ? だからてっきり僕以外の誰かに声を掛けたんだと思って、そのまま階段を下りていこうとした。
「おい、待てと言ってるだろう」
「うわっ」
 いきなり肩を引かれて、足を踏み出しかけていた僕はそのままあっさり階段で足を踏み外した。足首に鋭く強い痛みが走り、悲鳴が上がる。次いで襲い来るだろう衝撃に目を閉じて身構えていたけれど、予期していた痛みは訪れなかった。
「……あ、あれ?」
「驚かせたようだな、すまない。平気か?」
 低くて聞き取りやすい耳触りの良い声が、耳に吹き込まれて背筋がぞわりとする。後ろから抱き竦めるような形で抱えられているのだと気が付いて、かあっと顔が熱くなった。
「は、離してくれっ」
 慌てて腕を引き剥がす。彼の腕が割にあっさり離れたことにほっと息を吐きながら足を降ろした途端、それが襲ってきた。
「いっ……」
 ズキッとした痛みが足下から脊髄まで一気に駆け上がる。あまりの痛みに叫ぶことすら出来ず、僕はその場に蹲った。
「おい、どうした?」
 彼の声は聞こえていたけれど、答えらることができなかった。痛みの元に手を伸ばせば、靴下越しにもはっきりと腫れて熱を持っていることが感じられる。
 捻っちゃったんだな……。
 とにかく少しでも痛みから意識を散らそうと、深呼吸してみる。深く息を吸い込み、ゆっくり吐き出した。それを何度か繰り返していると、少しだけ痛みが和らぎ落ち着いてきた気がする。
 じくじくと痛む足首にそっと力を入れると、ズキンと鋭い痛みが走った。だけどさっきと比べると、覚悟していた分もあってか大分マシだ。
 動けないほどじゃないな。
 そう判断して、手摺に捕まりながら立ち上がろうとしたら、再び声がかかった。

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