2ntブログ

プロフィール

あくあasえもと

Author:あくあasえもと
2/22生 東京在住
 
リンクは張るも剥がすもご自由に
ご一報いただけると嬉しいです!



倉庫(仮)

☆Pixiv☆
http://pixiv.me/emotokei(WJ、アニメ系)
http://pixiv.me/aquamilei(他、色々)

☆Twitter
emotokei
フォローお気軽に

☆skype
aquamilei
登録はお気軽に

☆mail
aquamilei@bf7.so-net.ne.jp


アンソロ・ゲストの執筆依頼は
とてもありがたいのですが
お受けできない場合があります
申し訳ありませんがご了承下さい

カテゴリー

ブログ内検索

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

sensitive plant

駱駝さんはぴば!!

会部




「うわっ! 何するんだよ、くすぐったいな」

 さっきまでの甘ったるい雰囲気を台無しにしてくれる、身を捩って大笑いする姿に、またかと舌打ちする。キスの合間に首筋から鎖骨へと指先を滑らせただけでこの有様だ。
 長い片思いを脱却し、一歩踏み込んだ関係になってから早一ヶ月、一人暮らしをしている者同士、互いの部屋に入り浸っているにもかかわらず、俺たちはまだキスしかしていない。別にどうしてもヤりたいってほど盛ってるわけじゃないが、……最悪なのは、こいつがスキンシップ自体は割と好きだということだ。
何かといえば傍に寄って来ては、俺に触れてキスをねだり幸せそうに笑う。だが少しでもこちらから仕掛けようとすればこれだ。蛇の生殺しとはまさしくこういう状態を言うのだろう。
 そうやって人の気を削ぐくせに、……ほら、まただ。
「あー、くすぐったかった」
 ひとしきりゲラゲラ笑った後、ほっと息をついたそいつが背中を預けてきた。柔らかい温もりが心地よすぎて困る。安心しきったその態度が、少しばかり癇に障った。
お前はいったい俺をどう位置付けているんだ?
 好きだと告げてきたのはこいつが先なのに、付き合いはじめてからこっち、ずっと振り回されっぱなしだ。中学生どころか小学生かと思うような子供じみたやりとりに溜息が出そうになる。こいつに合わせていたら、進展なんて望めやしない。この状況を冗談じゃないと思えるならまだマシだが、そうやって振り回されている現状をそう悪いものでもないと感じてしまい、ペースを合わせてしまう自分自身に、苛立ちが更に募った。
「……どうかしたかい?」
「何がだ?」
「なんだか機嫌が悪そうだから」
「そんなことねーよ」
「嘘だね」
 奴は断言すると、色素の薄い瞳でじっと俺を見据えた。深いところまで探るような視線にどくりと心臓が跳ねる。さりげなく伸ばされた指先が眉間に触れた。
「ここ、皺が寄ってる」
 とん、と軽くつつかれて、触れたところから奴の熱が伝わってくる。
 こっちは気を使って手も出さずにいてやってるのに、当たり前のように人の心を暴く無邪気さに、無性に腹が立った。
 だからこれは、ちょっとした意趣返しだ。
「えっ」
 両の手首を一纏めに戒める。骨張った細い手首は難なく片手に収まり、簡単に押さえつけることが出来た。
「ええと……あの、これは何の真似だい?」
 引きつった笑顔に、くくっと喉の奥が震えた。獲物を捕食するときの動物は、こんな気分だろうか。
「冗談はその辺にしてくれないか……うぁっ」
 脇腹に手を伸ばして、軽く触れただけでびくんと身体がしなる。
「なっ、やめ……っ」
 そのままするりと柔らかな肉を指先で辿るように撫で上げれば、びくびくと身体が震えた。
「鬱陶しいんだよ。触ってくんな、バカ」
「くっ、ははっ、や、──やめっ、は……っ」
 普段からくすぐったがりなこいつのことだ。そういう意図を持って触ったらどうなるかなんてわかりきっている。陸に打ち上げられた魚のようにもがきながら、大笑いするそいつに頓着せず身体をまさぐれば、面白いほど反応が返ってきた。
「~~っ」
 腋の下の窪みを引っ掻けば、声も出せずに突っ伏してひくひくと肩を震わせる。手も足もバタバタと動かして全身で抵抗を示していたが、体型も体勢もこちらのほうが圧倒的に有利だ。
「ん……くぅ……やめ……っ」
 駄々を捏ねる子供みたいに首を振り、身を守るように脇を締めて丸く縮こまった背中をついっとなぞれば、びくんっと大仰な反応と共に海老反った。
「ひ……ゃっ!」
 真っ赤になった顔を覗き込めば、うっすらと涙を浮かべて潤んだ目と視線が絡む。満足に息ができずに荒くなった呼吸と真っ赤になった顔との相乗効果で妙に艶めいて見えて、思わず息を飲んだ。
 慌てて手を離し、ヤバイ思考を振り払う。
「これに懲りたら、不用意に俺に触るな」
 しばらくはこいつの体温に振り回されることはないだろう。内心ほっとしながら、出来る限り悪辣に見える笑みを形作ってみせる。
 それなのに。
「嫌だっ」
 きっぱりと拒否されてしまった。眦にはまだ涙が光っているくせに、その声はしっかりした意志を持っている。
「……何でだ」
 その様子に気圧されそうになったが、すぐに我に返って取り繕った。嘲るようにくくっと笑いながら言い添えると、キッと睨みつけられた。
「くすぐられたいのか?」
「違うよ!」
 からかいに過剰反応する様がやたらと可愛くて口元が緩みそうになるのを何とか抑える。男の癖に、可愛いという形容詞がこれほど当てはまる奴も珍しい。
「くすぐられるのなんて大嫌いだ!!」
 さもありなん。これだけ反応が良いとなると、さぞかし小さな頃からくすぐられ続けてきたことだろう。トラウマになってもおかしくないレベルで。
「でも、」
 何かを言いかけて、躊躇ったように口を噤む。その態度が気になった。
「でも、なんだ? 言ってみろ」
「……言ったら、キミは呆れそうだ」
 今更何を言っているのかと言いたくなったがそれは飲み込んでおく。よほど子供っぽい言い草なんだろう。
「言え」
 言葉を命令に変えて顔を覗き込むと、目元を微かに赤く染めてそいつは俯いた。まるで恥らうような仕草は反則だと思う。
「呆れないでくれよ」
「ああ」
 保障はできないが、と心の中で付け加えて促すと、渋々といった面持ちで口を開いた。
「キミの傍にいると落ち着くし、──触ってると気持ちいいから、触れないのも触られないのも嫌だ」
 たまにくすぐったいけどさ。
 そうやってぽつりぽつりと呟くうちに、頬が鮮やかな朱に染まっていく。耳まで赤くなったそいつが、ちらりと上目遣いで見上げてきた瞬間、──陥落した。
 ……ちくしょう。
「お前、覚悟しろよ」
「え? あ、ちょ……なに?」
「バカが」
「なっ、バカって言うほうがバカなんだからなっ!」
 腕を掴んで強く引き寄せれば、バカが真っ赤な顔をしてぎゃあぎゃあ騒ぐ。照れ隠しもあるのか盛大に抵抗された。バシバシと肩口を叩かれて閉口する。
 尚も言い募ろうとする唇を塞いで、触れるだけのそれとは違う口付けを施した。
「ん……ぅうっ」 
 もう少し待ってやろうと思ったのに、──バカな奴だ。
 ゆっくり馴染ませるように口の中を辿れば、腕の中の身体がひくりと竦んだ。刷毛で刷いたようにぽうっと頬が赤くなり、さっきとは違う意味で潤んだ目元とその表情にぞくりとする。衝動のまま口付けて、竦んだ身体を押し倒した。
 奴の震える指先が、俺の指に絡む。
 触れた部分から怯えが伝わってくるのに、抵抗はない。
 それに気が付いて顔を上げれば、今にも泣きそうな目が、まるで縋るように俺を見つめていた。その視線に吸い寄せられるように口付けるのと、奴がそっと瞳を閉じるのは、ほとんど同時だったと思う。
 焼き切れた理性の糸を繋ぎ合わせる努力を放棄して、──そのままそいつを貪り尽くした。

 一番バカなのが誰かなんて、とっくに承知の上だ。





オジギソウ
別名:ネムリグサ、ミモザ
 英名:sensitive plant
 四月十五日の誕生花
 花言葉は「敏感」「感じやすい心」「繊細」「無邪気」

駱駝さん、お誕生日おめでとうございます
いつも多大なる萌をありがとうございます
だいすきです!!

<< タイトルなし | ホーム | 微妙な予告的プロローグ >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP