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団長様と会長閣下(仮)準備号

会長+ハルヒ
スパコミ終わってアップしたつもりになってました
全文公開です

夏以降本編発行予定


「……もう一度言ってみたまえ」

「あら。生徒会長だなんて祭り上げられてる割には随分と察しが悪いのね。それとも頭が悪いのかしら? まあ別にいいけど」
 やたら威勢がよく、やたら甲高い声で、やたら美人なその女は、ふふんと鼻を鳴らして意気揚々と胸を張った。形のいい胸で制服が押し上げられる。あれはDくらいあるだろうな、と下世話なことを考えながら、俺は伊達眼鏡をくいっと押し上げた。
 女の隣には、古泉が至極嬉しそうに侍っている。こっちは面倒な生徒会業務をお前らの指示通りきっちりこなしてやってるというのに、フォローも事前通達もなしか。ふざけんな。
 その一歩後ろには、SOS団の雑用係の姿が見える。俺と目が合うと軽く会釈した。この場にバカ女がいなければ謝罪のひとつもありそうな風情だが、どうせこいつもこの女を止める気などない。
 ああ、面倒くせえ。
「次に我がSOS団で撮る映画に、あんたのその小悪党めいた仏頂面を使ってあげるって言ってるのよ」
 朗々と謳い上げるようにわけのわからないことを並べ立て、涼宮ハルヒは満面の笑みを浮かべる。
 そして、高らかに宣言した。
「感謝なさい!」
「断る」
「何ですって!? あたしがここまで譲歩してお願いしてあげてるのに、どういう了見よ!」
 とりあえずどこに譲歩だのお願いだのがあったのかさっぱりわからないが、そこに突っ込んでも疲れるだけだと理解していた賢い俺としては無視するに努めた。
 業務を終えて帰ろうとしたところに突然やってきたかと思えば、「あんた人相悪いから映画に使えそうだわ。協力なさい」と突きつけてきたんだぜ。そんなので引き受ける人間がいたらお目にかかりたいもんだ。しかも俺は、用意された筋書きに従っているだけとはいえ、お前らの活動を潰そうとしている張本人だぞ? その協力を仰げると思うのがそもそもの間違いだと思うが、この女の自信はいったいどこからやってくるんだ。
「生徒会室は、用のない人間は立ち入り禁止だ。早く帰りたまえ」
 淡々と告げると、相手にされていないことに気付いたか、涼宮がきりりと柳眉を釣り上げる。
「用ならあるわよ!」
「それならば早く用件に入りたまえ。私も忙しい身なのでね。キミの与太話に付き合っている暇はないのだよ」
「与太話? どこが与太話だっていうのよっ」
「いや、まあ与太話だろう……」
 雑用係がぽつりとツッコミを入れたが、涼宮の耳には入らないようだ。
 古泉はさっきからにこにこと楽しそうに俺と団長様の遣り取りを眺めている。役に立つつもりがないならお前だけでもさっさと帰れ、うざい。
「用件は今伝えた通りよ。反論は許さないわ。撮影のスケジュールはまだ決まってないけど、無理な日があるなら先に言っておきなさい。考慮してあげるから」
 ……話を聞かないとかいうレベルじゃない。無理を通して道理を引っ込めるのが当たり前と言わんばかりの態度に頭が痛くなってきそうだ。唯一ここにいる中で、この非常識極まりない女を止めることができそうな男は、眉間の皺を深め、苦虫を噛み潰したような顔をするばかりで苦言を呈そうとはしない。表情からすると、もしかしたら文芸部室から歩いてくる道すがら散々言って聞かせたが効果がなかったのかも知れない。
 どいつもこいつも役立たずが。
「断ると言っているだろう。キミについている耳は飾りなのかね? 早くここから出て行きたまえ。キミに付き合っている時間はない」
 さっさと帰りてーんだよ、こっちは。
 だがそんな意図が、目の前の女に通じるはずもない。もし通じたとしたと黙殺されて終わりに決まっている。そして俺の予想は、あまり嬉しくないことに大当たりだった。
「何よその口のききかたは。あんた何様のつもり? 生徒会長なんて所詮生徒の雑用係じゃないの。忙しいだなんて、時間の使い方が悪い証拠みたいなものね。仕方ないからあんたに時間の使い方というものを教えてあげるわ。余裕なんて、できるものじゃなくて作るものなのよ!」
 概ね同意だが、だからといってお前に物事を教わらなきゃならないほど破綻してねーよ。
「さあ、映画に出るって言いなさいっ」
「付き合ってられん」
 話にならない。
 一言の下に奴の提案を切り捨てて、溜息をつくかわりに冷笑を浮かべた。
「生徒会は生徒の代表として位置づけられている。それを束ねるものが、何故キミたちのような部活動でもない団体へ力を貸さねばならないのか理解に苦しむ」
「力を貸すだなんておこがましいにもほどがあるわ」
 涼宮は俺の言葉を鼻で笑って目を眇めてみせた。
「あたしはね、あんたを使ってあげるって言ってるの。立場はこちらが上、そんなこともわからないの?」
 わかんねーよ。
 これだけ話が通じないとなると、長門有希よりよほど宇宙人めいて見える。さわやかな笑顔を浮かべる優男に、うんざりした顔を向けたが、自分でどうにかしろと言わんばかりにその表情は変わらない。まるで能面のように張り付いた笑顔がむかつく。殴ってやりたい。
「とにかく、キミの要求を受け入れるつもりはない。私はもう帰らせてもらう。諸君も早くこの部屋から出てくれたまえ」
 そう言い置いて、古泉と雑用係の腕を引っ掴んで廊下に出す。
「ちょっと、あたしの団員に何をするのよ!」
 よし、ついてきた。
 これ幸いと施錠してくるりと踵を返すと、キーキー喚く女の声が廊下に響いた。疲れたような声がその甲高い声音に重なる。
「あっ、何よ。逃げるつもり?」
「おい、ハルヒ。もうやめておけ……会長にだって都合というものがある。あまり他人様を巻き込むんじゃない」
「あんたまで何言ってるのよ! 交渉っていうものはねえ、主導権を握ったほうが断然有利なのよ。相手の都合なんてもんにまで構ってたら、いい作品を作ることなんかできやしないわ」
 とんでもない理論だが、なるほど正論だ。
 それを許される人間はかなり数が限られているが。
「ちょっと、待ちなさい!」
 涼宮が俺の袖をぐっと引っ張った。とてもじゃないが女とは思えない膂力に一瞬驚いたが、構わずそのまま歩き出す。
「えっ、やだ。ちょっとあんた止まりなさいよっ」
 足を止めるとばかり思っていたんだろう。戸惑いを含んだ声に耳を貸さず、ずるずるとそいつを引き摺りながら帰路へ急ぐ。
 制服が伸びそうだな。
 そうなったとしたら機関がすぐさま新しい制服を誂えるだろうからどうだっていいが、少しばかり面白くない。だからといって女相手に振り払うような真似をするのも寝覚めが悪いし、そんなことをしようもんならこの女は鬼の首を取ったようにはしゃいで、その行為を盾に、ろくでもない思いつきに俺を付き合わせようとするはずだ。少なくとも機関から受け取った調書が確かなら、この考えは推論の域に留まらない。
「ねえ、ちょっと! 聞いてるの?」
 ヒステリックな女の甲高い声というものは、聞く人間の気分をささくれ立たせる作用があるが、この女の声はそんなに耳障りではない。キャンキャンとよく吠える小型犬とかこんな感じだよなあと思って、口元に笑みを浮かべた。
 さすがに女に対してその連想が失礼なものだという自覚はあるが、いっそ妄信的なほどこの女に傾倒している古泉あたりに話を振ったらどんな顔をするだろうか。
 下駄箱へ着いて靴に履き替え、ちらりと後ろを顧みる。
 呆れ果てたか疲れ果てたか、男ふたりの姿はない。後から来るのか、それともいったん文芸部室に戻って鞄でも取りに行っているのか、どちらかだろう。
 そして肝心の涼宮はといえば、キリッと釣りあがった杏仁型の目で、こちらを射殺そうとせんばかりに睨みつけていた。
 まったくの無視をされることには慣れていないのだろう。駄々を捏ねる子供のような、心底悔しそうな顔をしている。あと少しつついたら悔し泣きでもしそうな風情だ。
 思わず笑ってしまいそうな口元を引き締めて、殊更冷たい表情を装えば、相手の目に微かに怯んだような色を見つけて、意味もなく得心がいく。
「付き合ってられん、私は帰らせてもらう。キミも一応は女性なのだから、あまり遅くならないうちに早く帰りたまえ。それとも送る必要があるかね?」
 揶揄するように言葉を紡げば、端整な顔立ちがかあっと朱に染まった。
「バカにしないでちょうだい! なんであんたなんかに送ってもらわなきゃいけないのよ!!」
 予想通りすぎる反応に吹き出しそうになって、慌てて背を向けた。
「ではお先に失礼するとしよう」
「覚えてらっしゃい! 絶対後悔させてやるんだからっ」
 今時芝居の中でも耳にすることがない三下のチンピラのようなセリフに内心苦笑しつつその場を辞した。どう贔屓目に見てもそれは悪者のセリフじゃないか? まあ、あの女が正邪で物事を考えているとは到底思わないが。
 それにしても面倒なことになったな……そう考えながらも、どこか楽しんでいる自分自身に苦笑した。

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