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彼を抱いて、彼に抱かれる

A5 P52 500円 20080503発行AQUA
生徒会長×古泉一樹×キョン
表紙:榎よしひろ様
会古、古キョン、R18描写アリ
キョンと会長が古泉を共有するお話
古泉愛されてますが古泉が空気です



サンプル

032.jpg


 たまたま購買で、あの人を見かけた。
 古泉の体に、時折マーキングのように残された跡を見つける度に、頭に浮かぶ人だ。……くそ、思い出すとむかつく。
 目立つ人だよな。
 人混みの中で頭ひとつ抜きん出ている長身がそのひとつの要素であることはもちろんだが、身にまとう雰囲気からして、そこだけぽっかり抜き出したかのように周囲と異なっている。
 見た者に怜悧な印象を与える銀縁の眼鏡は、確か古泉が見立てたものだったか。なるほどよく似合っている。素があんなのだとは、とてもじゃないけど思えない。単なる小道具だけで別人のように振舞えるわけではないだろうが、あれがなければもう少し違う雰囲気になりそうだ。
 古泉の、どこか甘さを含んだハンサム顔とは違った趣きを感じさせるきりっと整った若武者のような顔は、その表情と相俟って見事なまでに冷たい無慈悲な人間に見える。絵に描いたようなわかりやすい悪役として、確かにこれ以上の適任はあるまい。
手に持った購買のおにぎりだとか紙パックが、似合わないことこの上ないな。
そう思ってくすりと笑ったら、ふと、こちらに振り向いたその人と視線があった。
 あまりのタイミングのよさにどきりとして、視線の強さに怯みつつ、軽く会釈程度に頭を下げておく。一応知り合いだし、仮にも上級生だからな。
俺は年功序列というものがあまり好きではないし、たかが一年や二年の年の差で何が変わるのかさっぱりわからないのだが、人間関係を円滑に進めるためにはそういった態度が有効だということは知っている。
 銀縁の眼鏡が、蛍光灯の光を反射した。
緩慢とした動作で眼鏡をかけ直した会長が、こちらに向かって口の端を笑みの形にゆがめる。
その偽悪的としか形容しようのない笑い方を『生徒会長』がしてしまっていいんですか?
心の中でそうツッコミをいれたところで、俺の元へと会長が歩いてきた。傲岸不遜で居丈高な面持ちで話しかけてくる。
「奇遇だな」
「……そっすね」 
「キミも購買を利用していたとは知らなかった」
「たまたまです」
 なんだろうこのやりとりは。
 というかこんなところをハルヒにでも見られたりしたら随分面倒なことになるわけだが、その辺りをこの人は自覚しているのだろうか。
「ほう、そうか」
 ちょうどいい、付き合え。
 周りには聞こえないだろう囁き声でそう付け足して、会長はさっさと歩き出した。
 一瞬呆気に取られていると、軽く振り返って目線だけで促してくる。
 ……なんとなくわかってはいたけど、なんて傍若無人なんだろう。俺に予定があるとは考えないのか。いや、別に予定など何もないのだが、それにしたって別に親しいわけでもない下級生に取る態度ではないだろう。
 そんなことを考えながらも、会長の少し後ろをついて歩いてしまってるのはなんでだろうね。
多分、このノリに覚えがあるのが敗因だという気がする。
それはデジャヴに近い感覚だ。
 階段をのぼりきった先に閉ざされた扉の前で立ち止まり、ジャラジャラと音を立てて鍵の束を取り出した。飾り気のない機能性を重視した(というよりも機能性しか取り得がなさそうな)キーホルダーに提げられた鍵の内、その一つを探り当てて鍵穴に差し込む。その慣れた仕草で、この場所によく訪れていることを容易に想像することができた。
 扉が開くと、清浄な空気がぶわっと流れ込んでくる。
 今日は、風が随分と強い。
「いいんですか、勝手に入って」
 確か生徒手帳の規則に、屋上には許可なく立ち入りを禁ずるという項目があったような気がする。
「お前らだってしょっちゅう来てるだろ。こんなのはなあ、ようはばれなきゃいいんだよ、ばれなきゃ」
その言葉に一瞬息を呑んだ。
実際に俺は何回もこの場所へ古泉と共に訪れているのだ。
「……なんで知ってるんですか」
「さて、なんでだろうな」
 にやりと唇の片端をあげて微笑んだその表情は『生徒会長』としてのものとはかけ離れていた。無駄に余裕ありげな態度が癪に障ることこの上ない。
 もちろん、俺がそういった態度に対して苛立っていることをこの人は百も承知なのだろう。性格が悪いというより、どちらかというといい性格をしてるといったほうがより近いかもしれない。
 また、妙なデジャヴを感じた。
 いや、深く突き詰めるのはやめておくことにしよう。ただの気のせいだってことにしておいたほうが、俺にとって都合がいいに違いないからな。
「まあ、そんなことはどうでもいいだろ。座れよ、食おうぜ」
 フェンスから少し離れた壁際にどっかり腰を下ろして、会長が屈託なく笑った。
 ……仕方ないか。
 どうせこんなところまでついてきてしまったんだ。これから教室へ戻って食べるとなると相当時間をロスすることになる。どうせ教室へ戻る時間は後から必要となってくるわけで、休み時間そのものが減るわけではないのだが、既に腹が減ってどうしようもない状態の俺としては、さっさと昼食を取ってしまいたい。今日は体育もあったことだしな。
 釈然としない気持ちを抱えながらも、それを脇においやって会長の近くに腰を下ろすと、その人はやたら楽しそうな顔でぺりぺりとおにぎりの包装をはがしはじめた。
 さっきまで俺を先導していた人物と顔形はまったく変わりがないというのに、一気に砕けて緩い雰囲気を醸している。人間化ければ化けるもんだと内心舌を巻いた。
こっちの顔なら、高校生に見えなくもない。
「俺に用があったんじゃないんですか?」
 同じように、こちらはサンドイッチの包装を剥がしながら問いかけると、あっけらかんと返答が返ってきた。
「そんなもんねえよ」
 じゃあなんで、と思ったが、尋ねてみたところできっと俺がきちんと理解することができ、それなりに納得できる答えが返ってくるとは到底思えず、俺はそれ以上の追及を諦めようとしたのだが、わざわざ俺が質問するまでもなく、会長は言葉を続けた。
「一人で食ったほうが気は楽だが、味気ないんでな。お前なら邪魔にもならんだろ」
「はあ……そうですか」
 そう応じてはみたものの、やはり不可解極まりない。俺のどこまでも標準的な思考能力では到底推し量ることができない思考回路だ。
 この人と俺の関係は、有り体に言ってしまえば古泉を挟んでの恋敵というものに分類される。
恋敵……すごい響きだな。
すごすぎて鳥肌が立ちそうになった。頭痛がしてきた気もする。
 まあ、それは置いておくとして、そういう関係の二人が何の理由もなく昼休みを一緒に過ごすという状況が、非常にナンセンスかつ馬鹿馬鹿しい行為であると感じるのははたして俺だけなのだろうか。いや、そんなことはないはずだ。
 けれどもそんな一般論は、目の前で大して美味くもなさそうにエネルギーを補給するためだけの食事を取る人物にはどうやら通用しそうにない。
 やれやれ……。
俺は微かに肩をすくめると、手に持ったサンドイッチにかぶりついた。パンが少し乾いて、端がかさついていて閉口する。
 今までずっと、できる限り考えないようにしてきたけれど、その努力も空しく俺はこの時既に気がついてしまっていた。
 この人は似ているのだ。
奴の神……涼宮ハルヒと。おそらく本質的な部分が。

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