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あたらしいせいかつ 7

会部




「じゃ、じゃあよろしく」
 なんとかそれだけ言って、転がるように廊下に出る。
心臓がばくばくいってる。なんだこれ。
 深く息を吸ってゆるく吐き出すと、少しだけ気分が落ち着いた。顔は熱いままだけど、思考はかなりクリアになる。少なくともさっきまでみたいに、みっともないくらいうろたえたりはしない。
 ああびっくりした。
 不意打ちって、困る。なんていうか、いろんな意味で。
 もうすっかり普通の友達みたいな、……むしろ仲がいいみたいに親しげな顔をされる度に、どういう反応を返せばいいのかさっぱりわからなくてとても困る。わからないままどんどんずかずかと踏み込まれて、なし崩しのうちに壁を全部取り払われてしまった。警戒していたはずなのに、あんなことされたのに、もう彼のことをそんなに嫌いになれない自分がいる。
 たまに見せるちょっとした気遣いだったり、さっきみたいなさらりとした特別扱いだったり、なんだかんだいって押し付けがましくない優しさだったり。そういったものを垣間見るたびに、もしかしたらいい奴なのかもしれないって思ってしまうんだ。
うう、まんまと彼の計算に嵌められている気がしてならない。でもそんなのはきっと気のせいだ。だって僕なんか嵌めたところで彼には何の益もない。
「あー、さっさと帰ろう」
 そして下駄箱に向かいかけたところで、ふと立ち止まる。
 これから決済を通すってことは、あれのせいでまだ彼は帰れないんじゃないか……?
 そんな考えが頭をよぎった。既に手元の書類は殆ど片付いていたように見えたし、時間も時間だ。これから帰るところだったとしてもおかしくない。
 そういえば、補助予算の存在からして、彼の言葉がなければ知らないままだった。当然申請なんかしていたわけもなく、予算が下りる下りない以前の話だったに違いない。それなのに、恩を着せるようなことを彼は言わない。そして僕も、まだ彼にお礼を言ったりしていない。
 別にお礼を言わないくらいでどうこう言うような性質だとは思わないけど、そういうのほったらかすって、こっちの気分があんまりよくない。とはいえ、生徒会室にとってかえして礼だけ言ってまた帰るっていうのも、なんていうか……。
 うーん。
 しばらく逡巡した後、僕は中庭へと足を向けたのだった。
 

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