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無題

会←部 に見せかけた…
通販用の書き下ろし







 ふと気付くと、彼はいつも僕の傍にいてくれる。
 教室でも、放課後の帰り道にも、休日の買い物でも、他愛ない日常のそこかしこで、僕と彼は繋がっていられた。
 彼の隣が、僕の居場所だった。
 手を伸ばせば触れられる距離は、……だけど決してそれ以上縮まることなんてない。
 そんなこと、ちゃんとわかっていたはずだ。
 そう、その筈なんだ。
 ──それなのにどうしてだろう?
 気の置けない友人同士、近付いていくパーソナルスペース……それを酷く重荷に感じるようになったのは、いつ頃だろうか?
 肩が触れ合うたびに、指先が掠める度に、鈍い痛みが心臓の奥に響いたのは?
 嫌なんじゃない、嫌なわけがない。
 彼は頭が良くて運動も出来て格好いい。
 自慢の友達だった。
 僕は彼に比べたら何の取り柄もないけれど、そんな彼の隣にいられることを許されているのが嬉しかったし……ずっと好きで、憧れていた。
 煙草は吸うしお酒は飲むし、品行方正に見せかけてとんでもない奴だけど、そういうのも全部ひっくるめて彼はとても魅力的だ。
 嫌いになんて、なれるわけない。
 だけど、喉奥に引っ掛かった魚の小骨のような違和感が、僕を苛む。
 その理由を知るのは、とても怖い気がしていた。
 懸命に目をそむけていた事実に、多分自分自身で気がついてはいたのだと思う。
 だから、彼がアイロニカルな微笑を浮かべて、僕に向けてその女性を紹介してくれたとき、何の感慨も湧かなかった。
 出てきた言葉も何の変哲もない言葉だったと思う。

 おめでとう。
 綺麗な人だね。
 どこで知り合ったんだい?

 彼がどう答えたかは覚えてない。
 だけど、自分で口にした言葉はよく覚えている。
 僕が居場所を失くした日、彼は恋を手に入れた。





 おめでとう。
 綺麗な人だね。
 どこで知り合ったんだい?

「ちくしょう」
 賭けに負けてヤケ酒を煽る俺に、目の前の男が迷惑そうな表情を見せる。
 こっちは客だっていうのに、態度が気に入らない。
 いつものスマイル0円はどうした。
「あなたのいう『客』とは、真夜中に突然押しかけてきて酒を飲ませろと暴れる人間のことですか。僕の知る『客』とはだいぶ意味が違うようですね」
「うるせえ。じゃあその辺で飲んで補導されてもいいのか」
「あなたを補導する補導員はいないと思いますが……まあ、いいでしょう。確かにこのまま追い出して何かあっても面倒ですから」
 困るから、と言わないのか言えないのか。
 とりあえず今すぐ追い出されることはなさそうだと判断して、俺はグラスになみなみと酒を注いだ。
「一気に飲むと二日酔いになりませんか?」
「どうだろうな」
 酒など、ほとんど口にしたことはない。
 酔っ払うというのも初めての経験だったが、それほどいいもんじゃねえな。
「面倒なことは嫌いだと、以前伺ったように思いますが……随分面倒な手順を踏まれるんですね」
「何の話だ」
「相手を試すような真似はなさらずとも、好きなら好きと言ってしまえばいいだけでしょう?」
 何をどこまで知っているのか、秀麗な面立ちに食えない笑みを浮かべて奴は言葉を続ける。
「人間素直が一番ですよ」
 そんなものとは対極に位置するくせに、そんな風に嘯いたそいつの顔を見ていると反吐が出そうだ。
「……お前に言われたくはない」
「そうでしょうとも」
 反駁する言葉を軽く受け流して、奴は微笑を絶やすことはない。
 好きなら好きと……違う、俺は諦めたかっただけだ。
 奴の反応を窺おうとしたわけじゃない。
 自分を騙しきれない後味の悪さを、酒で覆い流した。

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