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視線

A5 P20 200円 20091101発行
キョン×古泉 R18

消失の後のおはなし
古泉を気にするキョンと、そんなキョンが気になる古泉

サンプル



 長い長い坂道を下りながら、僕たちは家路へと辿る。
 先を歩く女子団員のほうから明るい笑い声が聞こえてきて、釣られてこちらの口元にも笑みが浮かんだその瞬間、ちりっと首筋の辺りが疼いた。
 ……また、だ。
 このところずっと、視線を感じる。
 振り返れば彼と目が合うけれど、彼はすぐにさりげなく視線をそらしてしまう。だから僕は、その視線の意味を彼に尋ねてしまってもよいものかどうかを計りかねていた。
 いつからだろう?
 思い起こしてみれば、年の終わりが差し迫った頃に遡る。
 彼が足を踏み外し階段から落ちてしまった瞬間を、僕は三ヶ月経とうとしている今でもありありと思い出せる。それからしばらく意識不明だった彼がようやく目を覚ました時には、とても安堵したこともまた覚えていた。それは涼宮さんの安寧のためだと自分に言い聞かせて、殊更何でもないように振舞ったことも勿論覚えている。
 目覚めた後の彼は、ふとした瞬間僕のことを視線で追っているように感じる。そう、今さっきと同じように……。
 いや、きっとただの気のせいだろう。
 そう結論付けてくすりと口元だけで微笑めば、不機嫌そうな声が追随した。
「何、思い出し笑いしてるんだ?」
「大したことではありませんよ。どうぞお気になさらず」
 さらりと受け流すと、彼の眉間にある皺が深くなる。それでもそれ以上言い募ることも問い詰めることもない。そんな彼の距離の測り方は、僕にとってとても心地よいのだ。
 さりげない優しさを知っているのは、何も僕ひとりのことではないと思う。彼の近くにいる人間は、多かれ少なかれその距離感の秀逸さを知っているはずだ。決して無理矢理踏み込もうとはしないのに、いつの間にかすぐ傍にいる。それが当たり前のことだと感じさせるものがあるのだ。
 けれど、ここ三ヶ月ほどはどうも居心地が悪い。
 するりと外される視線の流れはとても自然で、ともすれば僕の自意識過剰のようにも思えるから、彼に直接問いただすことは出来なかった。別にお前なんか見てないと言われるのが、少し淋しかったのかもしれない。答えを知らなければ自分に都合が良いように思い込んでいられるからだ。
 彼が僕を見つめている理由は気になったけれど、それ以上にその視線を失うことのほうが怖い。
 それなのに。
「おかしな奴だ」
 そう口にした彼の声音があまりに柔らかく優しげだったものだから、言うまいとしていた言葉がつい口をついた。
「あなたが僕を見ている理由を考えていたのです」
 ぽろりと零してからハッとする。けれど、取り繕うのも逆に変だろうと思い曖昧な笑みを浮かべるに留めた。けれどやはり何かしらフォローしたほうがいいだろうかと視線を彼へと向けて、──僕は、言葉を失った。

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