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crime 5

会部




「……ありがとう」
 もう一緒にいられないことはわかってたから、
「あと、ごめん」
 迷ったけれど、そう口にした。
「なんで謝るんだ」
「う、」
 いざとなると口ごもりそうな自分を叱咤する。たぶん、ここで何も言えなかったら僕は一生引き摺ってしまいそうだから、ちゃんと伝えてしまおうと思った。迷惑になるかな、なんて今は考えない。だから謝った。どうせ全部ばれてるんだし今更だけど、彼が聞きたくないだろう言葉を僕は口にしようとしてるんだから。
 スペアキーを、ぐっと握り締めた。
「……僕は、キミのことが、好きなんだ」
 口にしたら、すぅっと心が軽くなる感じがした。
 つよく握り締めた拳の中で、ギリギリと手の平に鍵の縁が食い込む。
「友達としていられるのが嬉しくて、傍にいるの楽しかったし、だから、あんなこと望んじゃいなかった」
 それでも僕は心のどこかできっと、キミに触れたいと思ってた。触れられることが嬉しかった。身体がバラバラになりそうなくらい胸の奥のほうが痛んだけど、それでもやっぱり嬉しいほうが強かったんだと思う。だって、──もう耐えられないと思った痛みより、よっぽど今のほうが痛くて痛くてたまらない。
「望んじゃいなかった……っ」
 終わらせるつもりだったんだろう? ちょうどいいじゃないか。なんで泣く必要があるんだ。
 そう自問したところで、答えなんか出るわけがない。いや、むしろ……答えなんて、わかりきってると言うべきか。
 頬を流れ落ちた涙が、ぽたりと固めた拳に落ちた。
「ごめん、こんな……困るよな。はは……」
 乾いた笑いを口の端に乗せれば、それはひどく空々しく聞こえた。自分ですらそう思うんだから、彼にはなおさらそう感じられるはずだ。
「気にしないでくれ」
 そんな言葉を紡いだところで、涙が止まらないこの状況を目にした彼が気にかけないなんてこと、あるわけない。それがわかっててもなお涙が止まらない自分に腹が立った。
 情けないし、悔しい。
「終電、なくなっちゃう……よ……?」
 だから、もう帰っていいと言外に込めた言葉の意味は、彼に通じたはずだ。
呆れたような、深い溜息が聞こえた。
「そうだな」
 低くて耳触りの良い音が、鼓膜だけでなく心まで震わせる。びくりと肩が震えた。俯いたまま動けない。
 人の気配が遠のいていくことが、どうにもこうにもいたたまれない気分だ。
 いつから僕はこんなに弱くなっちゃったんだ。ずっとひとりだったのに、ひとりなんて慣れてるのに、──寂しい、なんて嘘だろう?
 早く、早くどこかに行ってくれ。
 そうじゃないと、きっと僕はキミに縋ってしまう。縋ればキミはそれを振りほどかないかもしれない。それは決して優しさじゃなくて、振り払うほうが面倒だからなんだけど……僕にとっては、この上ないほど甘い誘惑だ。
 だから、僕がその誘惑に負けない内にさっさと立ち去ってほしいと心から願った。
 そんなこととは露知らず、玄関先で佇んだ彼が、ぽつりと呟く。

「俺は、お前を友達だと思ったことはない」

 ……知ってた気が、する。
 でもまさかここで追い討ちをかけられるとは思ってなかった。クリティカルヒットをくらった格好になって、呆然としながら顔を上げる。
 かすんだ視界に映るのはぼやけた彼の顔で、表情なんて見えなかった。
 

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