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たとえばこんな

古キョン
竜原さんに捧げ物、というかお供え物(何
しあわせ古泉というより、(頭が)しあわせな古泉になった気がします


「滞在三日目からは客とみなしません。起きてください」

 僕の宣言に、まるで自室にいるかのような寛いだ雰囲気でベッドにごろごろ寝っ転がっていた人物が、にやりと笑ってみせる。
「やなこった」
 そう言い置いて、再びまどろみはじめる彼に、思わず溜息が零れた。その様子すら、彼には面白いものとして映るらしく、くすくすとさざめくような低い笑い声が聞こえてくる。
「いつまでそうやっているつもりですか。あなたが僕の家に来たのは課題を終わらせるためだったはずですが」
「んー……だから、課題が終わるまではこうしてるつもりだが」
「何言ってるんですか。寝てる間に勝手に終わるわけないでしょう。ほら早く起きて、顔を洗ってきてください。朝食を取ったら今日こそ課題を終わらせてもらいます」
 ……そうじゃないと、神経が焼き切れそうだ。
 本来一人きりの時間が約束された空間に、他者の存在があること。しかもその上、その存在が彼であるということ。一日二日ならどうにか我慢のしようもあるが、三日目ともなるとそろそろ限界が近い。
 理性が、保たない。
「うるせえなあ、……ったく」
 そんなぼやきを口の端にのせながら、ようやっと身体を起こした彼に向かって畳み掛けておく。
「それはこちらのセリフです。いいですか? 確かに僕はあなたの家庭教師役を仰せつかりましたし、それに否やはありません。あなたの成績があまりに悪いと、僕らの活動にも差し障りが出てくる恐れがあります。ですがこうも非協力的な態度ばかり取るのであれば、この件はなかったことにしていただかなければなりません。それでもいいんですね?」
「……しょうがねえなあ」
 しょうがないのはあなたです。
 気のない返事に呆れたけれど、それでもなんとかベッドから降りてくれたことにほっとしたのも束の間、それと同時に、シャツの端が捲れ上がって、肌の一部が見えたことにぎょっとする。慌てて目をそらしたけれど、日に焼けてない肌の白さが、頭に焼きついたように離れない。
「……着替えを、用意しておきます。シャワーを浴びるならどうぞ」
「んー」
 まだ眠たげに目をとろんとさせて、ふらりと彼が足を向けた先は、廊下ではなく僕のほうだった。眠そうな危なげない足取りで僕の前まで来て、肩を引き寄せられる。
「うわっ、なんですか?」
 思いのほか強く引っ張られてたたらを踏んだ。
 彼はパジャマ代わりのシャツにトランクス一枚という軽装で、目のやり場に困った。男同士なんだからそんな、困る必要などないと自分に必死で言い聞かせてはみたものの効果がなく、心臓の音がうるさいくらい早鐘を打っている。
「迷惑か?」
「え?」
「俺がここにいちゃ迷惑か?」
「あ、あの、」
 じぃっと僕を見据える瞳はまるで黒曜石のようだ。目をそらすことが出来ない。睨むような強い視線ではないのに、自分ですら知らない心の深い部分まで暴かれそうな、そんな気分になってくる。
「俺が、ここにいるのは嫌か?」
「そんな、ことは、ない、ですけど……」
「そうか」
 肩を掴んでいた手が離れていった。温もりは室内の冷えた空気にかき消され、すぐに跡形もなくなる。
 彼は微かに俯き目を伏せて、口を開いた。
「もし、迷惑なら言ってくれ。出てくから」
「──っ」
 不貞腐れたような、悲しんでいるような、怒っているような、それでいて切なげな、色々な感情が入り混じったように聞こえるそのセリフにどきりとした。
 この人は、きっとわかってやっている。この後自分が口にするのがどういう言葉かも、きっとわかっているんだろう。それでも、彼の思い通りに動いてしまう自分を僕は知っていた。
「……迷惑じゃありませんよ」
「そうか?」
 探るように僕を見上げた視線には、先ほどまでの真っ直ぐな強さはない。そしてその視線はすぐに床へと落とされた。
「でもお前、俺のこと嫌いだろ?」
「好きです」
 ぽろりと口をついてしまった言葉に、ざあっと血の気が引いた。
 いや、待て、落ち着け。変な意味ではないと、友達として好きなんだとでも軽く言ってしまえばいい。いや、そんな風に付け加えることこそ意識していると思われてしまうだろうか。しかし何も言わなければ言わないで非常に気まずい事態になりそうだ。どうしたらいいんだ。彼が俯いたままで、表情を伺えないことが混乱を更に助長させた。
 内心の動揺を隠せないまま、せめてもと笑みを貼り付けることにすら成功している気がしない。とてつもない徒労感に襲われていると、不意に彼が顔を上げた。
「ん、知ってる」
「……は?」
「やっと言ったな」
 滅多に見ないような満面の笑みで、彼は僕にそう言った。さきほどまでの悄然とした雰囲気はどこへ行ったのか、唇の片端を上げてにやにや笑っている表情は悪辣とさえ呼べそうなもので、困惑の渦が頭に湧き上がる。
「あ、あの……」
「お前、実はバカだよなあ」
 特進クラスのくせに。

 そう嘯いた彼の影が、僕に重なった。










 蛇足。

「気付いてないとか、有り得ないだろ」
「いや、そう言われましても」
「本気で言ってるのか?」
「僕はいたって真面目です」
「愛が足りん!」
「これ以上どう好きになれって言うんですか」
「……」
「あの、どうかしました?」
「もういい。お前黙れ」

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